いろんな経験をしているからこそ、新しいことができる
廣田:内沼さんの仕事上のライバルって誰ですか?
内沼:BACHの幅さんやユトレヒトの江口さんなど、本棚をつくることを仕事としている方は他にもいて、よく比べられたりするので仲が悪いと思われていたりすることもあるのですが(笑)、全然そんなことはなくて何かとよく会いますし、一緒にお仕事することもあります。僕にとっては皆さん尊敬する先輩で、かつそれぞれ目指していることが少しずつ違うと思うので、刺激になりますね。
『本の逆襲』を書く上では、出し惜しみすることなく、自分が考えていることを全て出しました。けれどもそれを読んで、僕と全く同じような仕事をする人が増えていくというよりは、それにヒントを得て自分なりの新しい本と関わる仕事を考え、つくっていってくれる「仲間」が増えていくだろうと思っています。
本に関して、マージナルな場で仕事をする人が増えていったら、お客さんが本と出会うきっかけも多様になるので、むしろライバルと言えるような人がどんどん増えていくことを望んでいますね。
廣田:これまでの日本はストイックに一つのことを追い求めることが美徳とされてきましたが、いろいろなことをやっている人の方が、マージナルな場で仕事を見つけていくことができるし、今はそういう人材が必要とされていると思います。
内沼:廣田くんのように蟻の研究をしたり、フリーペーパーをつくったり、テレビ局で働いたり…ですね。
廣田:蟻の研究といえば、面白い話があって、全員が目的に向け猪突猛進の組織よりも、ふらふらしている遊び人みたいな蟻がいる組織の方が、餌を獲得できる確率が高まるらしいんですね。業界や仕組みの外に出て、マージナルな場で仕事をする人が増えたら、いろんな世界がもっと面白くなるのかなと思います。
内沼晋太郎 numabooks代表
1980年生まれ。ブック・コーディネイター、クリエイティブ・ディレクター。一橋大学商学部商学科卒(ブランド論)。 卒業後、某外資系国際見本市主催会社に入社し、2ヵ月で退社。その後、千駄木「往来堂書店」のスタッフとして勤務する傍ら、2003年、本と人との出会いを提供するブックユニット「book pick orchestra」を設立。2006年末まで代表をつとめる。のちに自身のレーベルとして「numabooks」を設立し、現在に至る。2012年、東京・下北沢にビールが飲めて毎日イベントを開催する本屋「B&B」を博報堂ケトルと協業で開業。著書に『本の逆襲』(朝日出版社/2013)、『本の未来をつくる仕事/仕事の未来をつくる本』(朝日新聞出版/2009)。
【「電通 廣田さんの対談」連載バックナンバー】
■takram design engineeringの田川欣哉さんに聞きに行く
・「自分で全部やってみたい人の仕事術」(前編)
・「自分で全部やってみたい人の仕事術」(後編)
■Sumallyの山本憲資さんに聞きに行く
・「リスクテイクする覚悟がある人の仕事術(前編)
・「リスクテイクする覚悟がある人の仕事術(後編)
■内沼晋太郎さんに聞きに行く
・「マージナルな場に飛び出す人の仕事術」(前編)
・「マージナルな場に飛び出す人の仕事術」(後編)※3月更新予定