それを行う要素の一つとして「プロジェクトそのものをデザインする=プロセスをデザインする」という発想が必要です。プロジェクト計画を立てるというと、かたい言い方になりますが、意外にこれができていないプロジェクトが多いのではないでしょうか。
仮に戦略立案から行うプロジェクトだったとして、戦略や施策を策定したり、詳細の要件を決めていくために、どんなタスクが存在し、何をいつまでに、どこまで決めていかなければならないかを、最初の時点でできる限り明確にした上でプロジェクトをキックオフします。
次に必要な要素は、事前に明確にしたプロセスに基づいて行うワークショップでのディスカッションです。プロジェクトには企業の部門間をまたいだメンバーや、様々なパートナーが参加するケースがほとんどです。
その中で大切なのは誰かの思い込みで戦略や施策、要件を決めるのではなく、コアメンバーが主体となり、ビジネス上の本質的な問題を探求し、課題設定したり、顧客が誰なのか?どんなニーズやインサイトがあるのかを深掘りしつつ、熱い思いを発散したり、整理したりを繰り返しながら、合意を形成しながら戦略や施策をかためていくという、まさに ” 協調型 ” のプロジェクトスタイルです。それが結果的にプロジェクトにかかわるメンバーの当事者意識や責任感にもつながっていきます。
逆に従来の提案型(エージェンシーやプロダクションが提案したものを、会議の場でパラパラ見て善し悪しを判断したり、企業側が持ち帰った上で、マネジメント層が感覚的に判断したりするやり方)ではメンバー間での合意形成がしづらく、結果的に手戻りが多くなったり、アウトプットが納得いくかたちにならなかったり、メンバーのモチベーションも下がり、プロジェクトとしての目的やゴールを達成できないということに陥りかねません。
当社ではこのようなプロジェクトのスタイルや手法を取り入れようと考えている、クライアントのパートナーとして様々なプロジェクトをサポートしていますが、当然ながらこれまでのやり方を全て変えるのは難しいでしょうし、クライアント側のプロジェクトマネージャーやメンバーの負担が増えるのではと思われるかもしれません。
しかしながら結果的にアウトプットに対する愛情や満足感、その先にPDCAを回しながら改善や最適化を図るという発想が生まれ、次につながるという部分では大きな効果を得られることも間違いありません。興味のある方はぜひ挑戦していってもらえればと思います。
阿部 淳也
ワンパク代表取締役 クリエイティブディレクター
1974年宮城県生まれ。自動車メーカーでのユーザインターフェースエンジニアを経て、IT部門でデザイナー、テクニカルディレクターを経験。2004年より都内の広告代理店系プロダクションにて多くのウェブサイト立ち上げにクリエイティブディレクターとして携わった後、08年にワンパクを設立。デジタル・インタラクティブ領域を中心としたコミュニケーションデザインを強みとし、 戦略・企画立案からモノづくりまでをワンストップで行いユーザと企業をサポートしている。
【インタラクティブクリエイティブマスターコース】特別連載
第1回 「宮崎駿監督の引退会見にみる、心を動かすコミュニケーションの変化とは」
――澤邊 芳明(ワン・トゥー・テン・デザイン社長)
第2回 「インタラクティブなクリエイティブの企画の出し方のヒント」
――木下 謙一(ラナエクストラクティブ 代表取締役CEO/クリエイティブディレクター)
第3回 「Co−Creative = 協調型プロジェクトのすすめ」
――阿部 淳也一(ワンパク代表取締役 クリエイティブディレクター)コチラの記事です
第4回 「音楽から考える、理想のクリエイティブ・チーム」
――村田 健一(ソニックジャム 代表取締役 チーフプロデューサー)
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