予想外の豪雪に事業中断に追い込まれた企業
一般的に企業は、巨大地震や大型台風、洪水などのリスクを抽出し、事業継続のための計画を整備しているが、ある程度の降雪や一時的なゲリラ豪雨などのリスクは、平時のリスクとして折り込み済みで、今回のような豪雪は想定されていなかった。
自身の在庫量の不足により欠品となる風評被害に加え、原材料そのものが調達できない期間が長期化し、さらに販売先である小売店や大型店舗でも被害が出るなど、物流の各所で流れが止まり、事業中断が発生した。
雪や雨は、一般的なリスクをとらえていた経営者が多い中での大きなダメージだった。企業は予め、何百年に一度発生するような地震などのリスクとは別に、企業が通常の業務を安全に遂行するために最適な在庫水準を持っている。商品ごとの発注から調達までの期間(リードタイム)をベースにリスク要因を加えて危険率を設定し、安全在庫量や最大在庫量を計算する。
在庫量を多く持てば、欠品率は少なくなるが、倉庫のレンタルコストなどで経費的な圧迫が生じることになり、生産を担当する責任者は、常に頭を抱えている。今回のような自然災害の事例では、生産に必要な原材料を季節的に安全な時期に大量に仕入れて、割引率を高めて対処しようとする動きがある一方で、やはり在庫量の増加でコスト圧迫に悲鳴をあげる企業も少なくない。
また、海外から原材料を調達している企業では、今回のような日本特有の自然災害に影響を受けることは少ないが、カントリーリスク(国特有のリスクで、暴動、テロなどのリスクや鳥インフルエンザなどの感染症リスクなど多岐にわたる)によって、同様の影響を受ける可能性を改めて経営者に認識させた。
欠品はあってはならないこと、を前提としている日本企業にとって、今回の豪雪リスクをどうとらえて安全在庫量を定めていくかは、重要な課題となっており、筆者への問い合わせも急増している。
生産から消費にいたるまでの間に、原材料、仕掛品、製品、商品などの種々の在庫が存在しており、顧客ニーズも多様化傾向にあって多品種化、少量化と同時に商品ライフサイクルも短くなる中、在庫をこれまで以上に多くもつのか否か、経営者は決断を迫られている。
さらに、今回のようなリスクに対応するため、自身の工場や生産拠点の直接的な被害だけでなく、原材料仕入先や製品の供給先を含めた物流の各所における損害が発生した場合に、事業の中断や利益の減少が生じた損失を填補する保険への加入が検討され始めている。リスクが集中するエリアでは、保険会社の引き受けが難しい場合もあるが、その場合でもキャプティブ(自家保険会社)を新たに海外に設置するなど、リスク対応にも大きな動きが出ている。