顧客視点で考える「旅」の難しさ
カスタマージャーニーはその言葉の通り、カスタマー(顧客)からみた場合の時間的、空間的なプロセスを旅としてとらえたものです。こう聞くと「あー、それってパーチェスファネルじゃないの?」という人が多いかもしれませんが、認知から購入にいたるまでのパーチェスファネルは企業のマーケティング活動を中心としたマーケティングのプロセスであるのに対して、カスタマージャーニーは文字通りそれを逆側から見た視点で作らなければなりません。したがってこの旅そのものの目的が何なのか、を理解しないと終点は設定できないことになります。
企業視点なら「購入」を終点とするのも頷けますが、実際には顧客の視点から考えると購入で終わることはほとんどないでしょう。なぜならその商品を使用して何かを得ることが彼らの目的であることが多いからです。カスタマージャーニーは顧客に対する深い理解がない限りはあまり意味あるものになりません。
見えにくい「体験」を見える化する
カスタマージャーニーでは、顧客を漠然と捉えるのではなく、具体的なペルソナを設定することが基本ですが、これもそのような具体的な個人の姿を思い浮かべることで「体験」を見える化することを目指すからです。これは特に企業からは気がつきにくい顧客の情緒的な反応や価値を明確にすることが必要だからです。
このため、カスタマージャーニーはカスタマーエクスペリエンスジャーニーと呼ばれることもあります。したがってカスタマージャーニーは、具体的な顧客(ペルソナ)の具体的な目的(旅の終点)にそってどのような体験(そのひとの感情的反応)をしているか、を一連のプロセスで示すことです。
カスタマージャーニーのデジタルマーケティングにおける意味
そしてデジタルマーケティングの文脈においては、それぞれのプロセスは構造化されたデータ(数値)を追いかけることによって、その旅が円滑に行われているのか、それともボトルネック(問題)があるのかを特定するなどの個別のマーケティング目的によって見直すことが求められます。その意味ではメディア選定やクリエイティブのような旅での特定のポイントのみの改善から、全体の旅の見直しも含めてさまざまな解決方法が考えられます。
こう書くと複雑に感じるかもしれませんが、たとえば家族や恋人と行った人生最高の旅を思い浮かべ、それを再現しようとしてみてください。自分や家族が喜び、感動し、またはストレスを感じたりや緊張したりしたのか。それらを思い出として写真や言葉にするとしたら。
このような旅は全体としての目的だけでなく、瞬間ごとの体験によって形作られていることに気がつきます。カスタマージャーニーとはまさにそれを再現して見える化しようという試みと同じです。
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