同じように悩んでいる人がいたら、背中を押してあげたい
廣田:複数の領域を掛け算で、というのはわかるような気がします。自分の話で恐縮なのですが、僕は、元々理系でエンジニアを目指していたんですね。最初はテクノロジーを勉強していました。その後、最初の就職では、テレビ局でディレクターをやることになったんですね。
そして、今はソーシャルとかデジタルの戦略を立てたり、コミュニケーションの戦略を立てるプランナーをやっています。なので、「デジタル系のPRの戦略を考えて欲しい」とか、「オウンドメディアを使ってコンテンツマーケティングをやりたい」といった依頼が来るようになったんです。
今の広告の世界では、テクノロジーの話とコンテンツの話、また、それらをどのように組み合わせば良いか?どんなストーリーをつむいで行けばいいか?といった戦略の話が出来ないといけないわけですが、今になって、エンジニア時代のスキルと、ジャーナリスト時代の感性が役に立っているなと感じています。
最近は、クライアントが抱えている課題でも、答えを簡単には見つけにくい時代になってきていると感じています。専門的であることは非常に重要ですが、専門分野がひとつだと、それで課題を解決できないときに対応しきれません。
安藤:転職や独立をしても、あるいは海外でも使うことができる「ポータブルスキル」が必要ですね。代表的なものは語学やMBAのような経営の知識だと思います。そういうものだけではなく、「人から相談されやすい」とか「友達を作る能力」みたいな、今まで経験してきたことのなかで人から頼られるようなものを含めても良いと思います。その領域で100人中1位を目指して、試行錯誤しながら地道に磨いていくうちに「これでいいんだ」という確信が生まれていくと思います。私自身もそうでした。
廣田:これまでの対談をとおしてお話を伺ってきた人達も、答えがない場所で試行錯誤をしている人達でした。マーケティングの用語では「PDCA」と言ったりしますが、試行錯誤を繰り返した人に一番知見が溜まっていくんですよね。答えはすぐには見つからないかもしれないけれど、あきらめずにやり続ける人が成功し、その人自身のあり方が答えになっていく、ということかもしれませんね。
安藤:当然、最初は悩みや迷いはあって、不安です。ひとつの専門を極めていった方が良いのかも、という思いはずっとありました。いろいろなことを試しながら自信をつけていった感じです。スマホ向け放送局から番組のMCをやってくださいと頼まれたり、企業から新規事業について意見をくださいと言われても、やったことがないので最初は不安なんですけど、逃げずに取り組むことで新しいアイディアや、専門的にやっている人達には見えにくい課題に気づいたりできるようになりました。そういった仕事を評価してもらい、手応えを感じていくなかで、いろいろな領域を横断してやっていることへの迷いやコンプレックスがなくなっていきました。
私は、今の自分の位置を最初から狙ってたどり着いたわけではなくて、迷い、悩みながらやってきました。途中で躊躇していたら、今の自分はいません。なので、同じように悩んでいる人がいるなら、その人達の背中を押してあげたいと思っています。
【「電通 廣田さんの対談」連載バックナンバー】
■takram design engineeringの田川欣哉さんに聞きに行く
・「自分で全部やってみたい人の仕事術」(前編)
・「自分で全部やってみたい人の仕事術」(後編)
■Sumallyの山本憲資さんに聞きに行く
・「リスクテイクする覚悟がある人の仕事術(前編)
・「リスクテイクする覚悟がある人の仕事術(後編)
■内沼晋太郎さんに聞きに行く
・「マージナルな場に飛び出す人の仕事術」(前編)
・「マージナルな場に飛び出す人の仕事術」(後編)