団体ツアーVS個人旅行、これからのインバウンドで伸びるのは、どっち?ーーインバウンド販促の“秘伝”④ 前編

そして、もう一つ。今やスマホやタブレットの時代です。オフタイムにPCの前に座る時間はなくなり、みんなが手元の端末の画面に触って、ホテルや飛行機やその他の観光手配ができてしまいます。日本語でじゃんじゃん予約ができてしまいます。英語ができれば、世界中たいていの予約サイトが見れてしまいます。

現在のようにITが進んでいない頃は、プロの旅行代理店に出かけていって、プロのオペレーター各種手配をしてもらわなければ、何一つ手配できませんでした。

それが、今や誰だって気軽に海外旅行の各パーツを自分で予約・手配できてしまうのです。

さて、以上あえて日本を起点とした、海外旅行(アウトバウンド)の話をしてきましたが、ここでがらっと、話を転換して、日本を目的地とするインバウンドの話に移りたいと思います。いうまでもなく、世界を取り巻くITの環境、観光業界の環境は、日本だけにとどまることなくグローバルに激変し、日々進化しつづけています。

当然、日本以上にアジア、そして世界中の人々がスマホやタブレットで、じゃんじゃん日本行きのLCCの航空券やホテル予約、その他の手配が自国語で、できてしまうのです。日本の状況と、海外の状況はまったく一緒なのです。当然、訪日旅行のスタイルにも大きな変化が生まれています。

ところが、日本のインバウンドにかかわる観光行政の方々、そして民間事業者の方々、そしてお茶の間の一般大衆は、まだインバウンド=訪日の“団体”旅行だと、ステレオタイプの固定観念にとらわれているケースが、ほとんどなのです。頭(発想)がまだ“団体”旅行なのです。

海外で顧客に直接触れ合う(台湾)

実際、東京の銀座や浅草、大阪の難波あたり、そして地方の観光地等に行くと、今なおアジアを中心にインバウンドの観光バスのまわりで、中国人をはじめ、たくさんの外国人団体の皆さんがたむろっている様子を見かけたりします。ところが、こういう分かりやすい光景に騙されていてはいけません。

ちなみに、観光業界の用語で、個人の訪日旅行のことを、FIT(Foreign/Free Independent Travel)と呼んでいます。海外からの自由な個人旅行ということです。

一方、団体旅行のことをGIT(Group Inclusive Travel)といいます。団体の込み込みパックツアーという意味です。航空券やホテルやバスや食事やガイド代まで、全部パックになっているわけです。

ここで、二つめの質問をします。現在、訪日旅行の市場において、

(1)FITの訪日客
(2)GITの訪日客

の、どちらが多いと思いますか?話の流れからすぐに推測できるとおり、今やインバウンドも(1)のFITが大半を占める時代なのです。

ところが、上述のとおり、わが国において、行政側も民間側も、どんどんFIT化するこのインバウンド市場の変化に十分に対応できていません。2010年以来、日中間には尖閣諸島問題があり、2012年には反日デモも起こり、また日韓には竹島問題その他が起こり、団体の訪日ツアー商品は売りにくく、また買いにくい状況が発生しました。

そんなこんなで、(2)の団体メインだった、中国でも今や(1)のFIT市場が急激に増えてきているのです。一つには中国でも個人観光ビザ、なかんずく数次個人観光ビザまで発給されるようになったことが大きい要因です。中国においても、訪日観光マーケットは、団体観光メインから、個人観光メインに大きくシフトしてきたのです。

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中村 好明(ジャパン インバウンド ソリューションズ 代表取締役社長)
中村 好明(ジャパン インバウンド ソリューションズ 代表取締役社長)

1963年生まれ。2000年、ドン・キホーテ入社。

広報、IR、マーケティング、CRM、新規事業担当を経て、2008年、社長室ゼネラルマネージャーとなり、訪日客誘致の責任者を兼ねる。

2013年7月、社内の訪日観光戦略部門をスピンアウトさせて、ジャパン インバウンド ソリューションズ(JIS)を設立し、その代表取締役社長に就任。あわせて、ドン・キホーテグループ全社の訪日客誘致プロジェクト責任者を務める。松蔭大学 観光メディア文化学部 客員教授。

中村 好明(ジャパン インバウンド ソリューションズ 代表取締役社長)

1963年生まれ。2000年、ドン・キホーテ入社。

広報、IR、マーケティング、CRM、新規事業担当を経て、2008年、社長室ゼネラルマネージャーとなり、訪日客誘致の責任者を兼ねる。

2013年7月、社内の訪日観光戦略部門をスピンアウトさせて、ジャパン インバウンド ソリューションズ(JIS)を設立し、その代表取締役社長に就任。あわせて、ドン・キホーテグループ全社の訪日客誘致プロジェクト責任者を務める。松蔭大学 観光メディア文化学部 客員教授。

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