団体ツアーVS個人旅行、これからのインバウンドで伸びるのは、どっち?――インバウンド販促の“秘伝”④後編

この他に、FIT市場で成功するために必要なこととは?

実際、日本全体のFIT訪日客の比率は、韓国、タイなどではどんどん伸びて、すでにGITの訪日旅行客よりも多くなっており、台湾ではほぼ互角、中国では、FITがまもなくGITとシェアを逆転するとまでいわれています。

ですからますます言語対応の重要性が増しています。フロアマップの多言語表記、店内放送の多言語化、スタッフの語学研修のニーズも高まっています。言葉のカベを取り除くこと、ないしカベを低くすること、これが最優先事項でしょう。

そして、一つ皆さんに提言したいのがネイティブスタッフ(外国人スタッフ)の雇用の充実です。GITの場合、ネイティブのガイドさんが何でも対応してくれます。FITでは違います。各国のお国柄を理解し、それぞれのニーズに先回りした受入整備や、販促企画を実行していくには、こちら側に各国の文化に精通したネイティブスタッフが必要だと思います。

全国各地の観光協会やコンベンションビューローなどにネイティブスタッフが勢ぞろいしているケースはほとんどみません。また、民間企業でもまだまだ稀です。

ちょっと、手前味噌ですが、わが社、ジャパンインバウンドソリューションズでは、米国、韓国、中国、台湾、タイ人の各ネイティブスタッフが揃っています。

もちろん、まだまだ十分ではありません。しかし、彼らの活躍なくして、現在のドン・キホーテのインバウンドの実績は創れていないと思います。ぜひ、コアな人材として、各国のネイティブスタッフを登用して欲しいと思います。

そして無料Wi-Fiの充実はいまやマストだと思います。今やインバウンドの観光客にとって、無料Wi-Fiサービスは、基本インフラだと思います。あったらいいなではなく、なくてはならないインフラとなっています。(ドン・キホーテでは現在全国の主要72店舗で、ようこそ!Wi-Fiという無料サービスを実施しています。)このほか両替サービス、本国通貨が引き出せる銀行ATMの設置なども推進すべきでしょう。

そして最後に、しつこいようですが、何よりも発想の転換が必要だと思います。繰り返しになりますが、個人の訪日観光客、FITを、すべてのインバンド戦略の中心に据えて考えることこそ、上述のような個々の戦略の前に、何よりも重要だと思います。

GITももちろん大事です。しかし、それ以上にこれからの伸びシロの大きい、FITを中心に据えた戦略が必要だと思うのです。一人ひとりの訪日客を大事におもてなしし、最高の満足を味わっていただければ、彼ら彼女らは何回も何回も日本を訪れてくれると思います。

私は、訪日リピーターの獲得こそ、訪日客1000万人を達成したわが国の次の目標、2000万人の達成に向けた最短の道だと確信しています。GITの顧客も次回はFITの顧客となる確率は高いのです。

FITはGITの団体客ほど目立ちません。アジアの人たちは、話す言葉を除けば、見かけ上、分からないことすらあります。ほら、明日あなたが行くカフェの隣の席の人は、海外からのFITの訪日客なのかもしれませんよ!

1 2
中村 好明(ジャパン インバウンド ソリューションズ 代表取締役社長)
中村 好明(ジャパン インバウンド ソリューションズ 代表取締役社長)

1963年生まれ。2000年、ドン・キホーテ入社。

広報、IR、マーケティング、CRM、新規事業担当を経て、2008年、社長室ゼネラルマネージャーとなり、訪日客誘致の責任者を兼ねる。

2013年7月、社内の訪日観光戦略部門をスピンアウトさせて、ジャパン インバウンド ソリューションズ(JIS)を設立し、その代表取締役社長に就任。あわせて、ドン・キホーテグループ全社の訪日客誘致プロジェクト責任者を務める。松蔭大学 観光メディア文化学部 客員教授。

中村 好明(ジャパン インバウンド ソリューションズ 代表取締役社長)

1963年生まれ。2000年、ドン・キホーテ入社。

広報、IR、マーケティング、CRM、新規事業担当を経て、2008年、社長室ゼネラルマネージャーとなり、訪日客誘致の責任者を兼ねる。

2013年7月、社内の訪日観光戦略部門をスピンアウトさせて、ジャパン インバウンド ソリューションズ(JIS)を設立し、その代表取締役社長に就任。あわせて、ドン・キホーテグループ全社の訪日客誘致プロジェクト責任者を務める。松蔭大学 観光メディア文化学部 客員教授。

この記事の感想を
教えて下さい。
この記事の感想を教えて下さい。

このコラムを読んだ方におススメのコラム

    タイアップ