SNSの声をもとにお客様と「共創」する

齋藤:SNSを使ったお客様との双方向のコミュニケーションにも力を入れていらっしゃいますね。

山岡:はい。お客様との「共創」関係もSNSがあるからこそ実現できることと思います。机の上で思い悩んでいるくらいなら、お客様に聞いてしまう。

たとえば当社では昨年の7月に、クルーズ市場に新たに積極進出する発表をしましたが、社長の発案でフェイスブックを使い、企画していたプランの価格の妥当性について質問を投げかけました。夕方に投稿したところ翌朝には100件近いコメントをいただき、経営の判断に有益なヒントをいただくことができました。

齋藤:お客様との共創という点では、H.I.S.さんはお客様以外、より対象を広げたソーシャルリスニングは行っていますか。

山岡:ビッグデータの時代と言われますが、マーケティングはデータありきでなく、まずはマーケターの仮説があり、その妥当性の検証のためにデータを活用すべきと私は考えています。そのためソーシャルリスニングは、あまりやっていません。

ただ、PontaとtwitterのID連携がされたときの当社はファーストユーザだったのですが、ユーザセグメント別につぶやきデータの傾向が整理できたので、ユーザニーズの把握に役立てることができました。

齋藤:仮説検証の際に、もっとも早くフィードバックを得られるのがSNSですか。

山岡:スピードも魅力ですし、また定
性的な生の声を聴けるところにより大きな魅力を感じています。

齋藤:多くの企業がまだSNSの活用自体に二の足を踏んでいると思いますし、さらに進んで開発途中の商品について公開の場で意見を聞くという取り組みは、なかなかできない決断だと思います。

山岡:当社はベンチャーから成長し、今があるので挑戦していく風土があるのかなと思います。そういう意味で、経営層の理解が得られていますし、またSNSの運用に際してはマニュアルやポリシーを作る以上に、運用を通じて担当者が“感覚”を養うことが大事だと思って使っています。

齋藤:ツールも必要ですが、感覚やセンスも大事ですね。

山岡:ツールやデータがどれだけ整備
されても、それを使いこなすマーケターのセンスや感覚がなければ成功しないと思います。

最近、当社では初めてカスタマージャーニーマップを作ったのですが、これまでスナップショットでしかとらえきれていなかったお客様の心理変容から行動に至るまでの全体図が見えてきました。

ただマップの作成は、旅行販売の知識に加え、データを読み解く力も必要とされるので、とても難しく時間のかかる作業でした。

永井:何種類ほど作られたのですか。

山岡:オンラインとオフライン別に20種類を超えました。作ってみると、たとえば大学生の男性とシニア層では、旅行の検討期間も前者は1週間、後者は3か月と全く異なる。おしなべると「旅行の検討期間は平均で45日」という数字になるのですが、それぞれのお客様の心理変容を読み解き、それに合わせた提案が必要だと痛感しました。

マップを作ったことで、ワントゥワンのマーケティングにも挑戦していきたい気持ちが強くなりました。

齋藤:あらゆるステークホルダーと共創関係を作る、H.I.S.さんのお取り組みは、SNS時代のマーケティング活動の方向性として大変参

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