やっと自分の街に帰ってきた、そして次の冒険へ
廣田:最近は、クライアントから、じっくり時間をかけてきちんとつき合って根本的に問題を解決していきたいです、という依頼も増えてきました。基本的に広告の仕事は短期集中決戦です。でも、そういう話とは違って、根本的な課題にじっくりと取り組みたいという相談が増えてきたように思います。発注して短期的にお付き合いをして終わりではなく、一緒に考えて、悩んで、答えを見つけましょうという依頼です。
もちろん、信頼関係を作るのはものすごく大変ですが、そういうことを考えると、代理店の「代理」という言葉のとらえ方も変わってきているのかなと感じています。安藤さんの「冒険に出よう」は組織人としても、参考になることがたくさんあります。ただフリーで働くことを推奨しているわけではないんですよね。自分に自信を持つとか、一歩を踏み出すことで世界が変わるということ。これは、個人で働くにせよ、組織で働くにせよ、大切なマインドだと思います。
安藤:「冒険に出よう」は25歳以下の若い人達へ向けたシリーズの一冊なんですが、とりあえずやってみようという気概が大事だということを伝えています。私も独立に2年近く時間をかけたので、準備は必要ですが、100%ではなくても70%くらいまできたら、起きてもいない将来に不安を持つのではなくて、まずは一歩を踏み出して欲しいです。会社員だから、実績がないからといった、「だから」の枠を越えて自由になればいいんじゃないかなと思っています。
廣田:そうですね。組織は大きくなればなるほどパワーも増すわけですが、一方で、同様にものすごい重力も働くものなので、相当頑張らないと自由に動けなくなってしまうところもあります。勇気や意志をもつことは大事ですね。そんな中で、安藤さんは冒険に出て、実績を残したと思います。今は、次の冒険は考えているんですか。
安藤:まずは、大学の仕事で、教育の分野で18歳から22歳くらいの若者の、入試から就職までの面倒を見るというのはとても大きな冒険です。これまで縁のなかった大学という大きな組織に入っていくことも大きなチャレンジになります。
あと、自分の人生は仕事だけではないので、人生の大きな設計として、住む場所、海外と国内のふたつの拠点で生活することだったり、今までやったことがないことにも挑戦したいです。ここ1年くらいは、それまでのチャレンジが落ち着いたというか、花開いて、やっと自分の街に帰ってきたような感じです。29歳のときに考えた「自分にしかできない仕事」がある程度はできたのかなと思います。ひとつの冒険を終えて、もとの街へ戻ってきて、「自分は何を使命にしようか」とか「自分の武器はそもそも何だ」というところをもう一度見つめ直しているところですね。
廣田:僕も同い年、同じ三鷹出身として大いに影響を受けて、自分を見つめ直す機会になりました。今日は本当にありがとうございました。
(株)スプリー代表 安藤美冬
1980年生まれ、東京育ち。慶應義塾大学卒業後、集英社を経て現職。ソーシャルメディアでの発信を駆使し、肩書や専門領域にとらわれずに多種多様な仕事を手がける独自のノマドワーク&ライフスタイル実践者。『自分をつくる学校』学長、講談社『ミスiD(アイドル)2014』選考委員、雑誌『DRESS』の「女の内閣」働き方担当相などを務めるほか、商品企画、コラム執筆、イベント出演など幅広く活動中。4月より多摩大学経営情報学部専任講師に就任。著書に7万部突破の『冒険に出よう』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)のほか、共著に『シェアをデザインする』(学芸出版社)、『僕たちはこうして仕事を面白くする』(NHK出版)がある。
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【「電通 廣田さんの対談」連載バックナンバー】
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・「自分で全部やってみたい人の仕事術」(前編)
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・「マージナルな場に飛び出す人の仕事術」(前編)
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・「展開型のキャリアで道を切り拓く人の仕事術」(前編)
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