僕も手探りながらですが、データサイエンスの活用を始めて、大きく2つ考え方が変わりました。
ひとつはターゲットについてです。
勘と経験に基づき、デモグラフィック情報でターゲットの仮説を立てるのがバカらしくなりました。
例えば、ある商品について「40代の男性がターゲットだ。いや、意外と20代女性もターゲットかも」などといくら議論しても、いざローンチすれば、こちらの想定とは全く関係のない文脈で購入してくれるのが顧客です。
今はその顧客の文脈がデータでとれるのですから、デモグラにとらわれず、そうした文脈を持っている人たちをターゲットにすればいいわけです。
つまり、事前にあれこれ考えるより、さっさとテストマーケティングをして、購入してくれた人を見てからターゲットを決めたほうが正確だと考えるようになったのです。
もうひとつは、因果関係でなく相関関係を大事にするようになったことです。
因果関係には原因と結果がありますが、相関関係にはない場合もあります。重視するのは、ただデータに現れた数値のみです。
例えば、コンビニなどでコーヒーを売る場合を考えてみます。
因果関係から考えると、コーヒーと合わせて食べるスイーツやお菓子などをお薦めしていこうと検討するでしょう。
しかし実際のデータを見ると、コーヒーと一緒に購入されているのはビールが多いという、全く想像だにしなかった相関関係が現れたりします。
人は物事を因果関係で考えるクセがあるため、売り手側は「コーヒーにはスイーツを」といったセット売りの仮説を立てがちです。
しかし現実は、その仮説を上回ったりするわけです。
もしかしたら、コーヒーのような刺激物が好きな人は同じようにアルコールが好きで、一緒には飲まないけれども、ついでに買っておこうということかもしれません。
こんなふうに、売り手側の勝手な思い込みを捨てて、相関データによる結果からストーリーを発見しようという意識がつきました。
データは単なる無機質な数字ではなく、人々の行動の足跡だと考えるようになったわけです。
しかし、データサイエンスに向き合わなければならないと考えているのには、実はもっと本質的な意味があります。
僕は今、クライアントも含めて一つのチームになって仕事を進めているという意識を持っています。
そんな中でチームの合意を形成するためには、数字による意思決定がすごく重要だと思うのです。
勘や経験も必要でしょうが、それだけに頼って一度は成果を出せたとしても、それだけではコンスタントに成果を挙げ続けることが難しいのです。
もちろん、データサイエンスを活用しても百発百中というわけにはいきません。
でも数字に基づく意思決定というプロセスがあれば、思うような成果が出なかった場合も、チームはみんな納得します。
前向きにとらえれば、次の打ち手のための新たなデータを入手したことにもなります。
もはや、僕一人の勘や経験だけでチームを動かしたり、クライアントの大事な予算を掛けてもらったりするわけにはいかない。
これが、僕がデータサイエンスと向き合うようになった本当の理由なのです。