ビックデータで「イノベーション」は起こせるか?

イノベーションを起こすのは人の英知

かの、スティーブ・ジョブズはこんな名言を残しています。

“消費者に、何が欲しいかを聞いてそれを与えるだけではいけない。製品をデザインするのはとても難しい。多くの場合、人は形にして見せて貰うまで自分は何が欲しいのかわからないものだ”

自分のインサイトは時に消費者自身もよくわかっていないものです。ソーシャルメディア上のつぶやき、コメントにしても、自分でも明確に意識していない本当の“欲求・願望”をダイレクトに口に出すことなどできるはずがありません。需要創造のキーとなる消費者インサイトそのものは生データとしては存在しないのです。ただし、間違いなくそのビックデータの中にそれを読み解く多くのヒントが眠っています。消費者は“何が欲しいか”は言えなくても、その“何を解決したい”“どうなりたい”という生声からインサイトを推察することは可能です。

そこで今、注目されているのが高い分析、計算能力と現場におけるデータ収集などビジネススキルも併せ持ったデータサイエンティストの存在です。しかし彼らが膨大なデータから確率の高い答えを導きだすために不可欠なのが精度の高い仮説という分析の軸です。そして、どんなにデータの解析技術が進んでもテクノジーだけでこの仮説を立てることは不可能です。膨大なビックデータを生かすたまにも、最後は人間が持つ創造性というアナログなストーリー構築の能力こそが最も重要なのです。

そして、それを司るのはクリエイターでありストーリーテラーでもある、マーケターの役目であるということを改めて認識する必要があります。

新市場の創造というイノベーションを起こせるのはデータだけでもテクノロジーだけでも十分ではなく、最後はクリエイティブな人間の英知であるという事を我々は決して忘れてはなりません。

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藤田 康人(インテグレート代表取締役CEO)
藤田 康人(インテグレート代表取締役CEO)

1964年東京都生まれ。慶應義塾大学を卒業後、味の素に入社。1992年、ザイロフィンファーイースト社(現ダニスコジャパン)を、フィンランド人の社長と2人で設立。1997年にキシリトールを日本に初めて導入し、素材メーカーの立場からキシリトール・ブームを仕掛けた。この結果、ガムを中心とするキシリトール製品市場はゼロから2000億円規模へと成長。2007年5月、IMC(Integrated Marketing Communication:統合型マーケティング)プランニングを実践する日本初のプランニングブティックとして、マーケティングエージェンシー、インテグレートを設立。代表取締役CEOに就任。著書に『どう伝わったら、買いたくなるか』(ダイヤモンド社)、『99.9%成功するしかけ』(かんき出版)などがある。2014年4月7日(月)に宣伝会議から最新刊『THE REAL MARKETING―売れ続ける仕組みの本質」が刊行予定。

藤田 康人(インテグレート代表取締役CEO)

1964年東京都生まれ。慶應義塾大学を卒業後、味の素に入社。1992年、ザイロフィンファーイースト社(現ダニスコジャパン)を、フィンランド人の社長と2人で設立。1997年にキシリトールを日本に初めて導入し、素材メーカーの立場からキシリトール・ブームを仕掛けた。この結果、ガムを中心とするキシリトール製品市場はゼロから2000億円規模へと成長。2007年5月、IMC(Integrated Marketing Communication:統合型マーケティング)プランニングを実践する日本初のプランニングブティックとして、マーケティングエージェンシー、インテグレートを設立。代表取締役CEOに就任。著書に『どう伝わったら、買いたくなるか』(ダイヤモンド社)、『99.9%成功するしかけ』(かんき出版)などがある。2014年4月7日(月)に宣伝会議から最新刊『THE REAL MARKETING―売れ続ける仕組みの本質」が刊行予定。

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