【前回のコラム】「数字の苦手な僕がデータサイエンスに向き合う理由」はこちら
広告業界では、「デジタル」という言葉が、ときに物事を混乱させることがあります。
例えば、クライアントから「デジタル施策について相談がある」というので話を伺っていたら、どうも噛み合ない。案の定、ネットメディアへの広告出稿の話だった、ということがあったりします。
こういった混乱の要因は、クライアント企業ではなく、相談を受ける広告マンのほうが業界の潮流に疎いということにあるのかもしれません。
かつては、クライアント社内における「デジタルなんとか部」の仕事は、マスキャンペーンを実施する際のわずかな残り予算を使ってネットバナーやリスティングを買い付けることだった、という時代もあったでしょう。
でも今では、企業のデジタルに対する認識は「メディア」ではなく、「ソリューション」です。
この認識が広告マンのほうにないと、クライアント企業の大胆な動きを見落としてしまうかもしれません。
ここ最近、企業がこれまで広告会社などにアウトソースしてきたマーケティング機能をインハウスで備えていこうという潮流があります。
これまでアウトソース先に蓄積されていたデータと知見を、これからは社内に囲い込んでいこうという意思の表れと言えるでしょう。
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たとえば、ソーシャルリスニングの機能です。
これは、顧客接点であるソーシャルメディアやオウンドメディア上で、自社のブランドがどのように評価されているかを365日体制でモニタリングしようというもの。
ここで収集したデータを社内各所にフィードバックし、商品・サービス開発やプロモーション施策などの次なる打ち手につなげていくのです。
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先駆者としては、米国ゲータレイド社のミッション・コントロール・センターや、デル社のソーシャルメディア・リスニング・コマンドセンターが有名ですが、これらの機能や考え方を進化させ、より企業戦略の中核的な役割を担う位置づけにしようというわけです。
特にメーカーは、リアルな顧客接点を流通企業に委ねているため、顧客の声や反応を聴く術が限られています。
その分、ソーシャルメディアやオウンドメディアというダイレクトな顧客接点が、すごく価値のあるデータの入り口になっているのです。
企業の経営判断を担うポジションは、企業活動の源泉であるという意味合いから、「川上領域」などと呼ばれたりします。
しかしよく考えると、企業活動の成果物である商品やサービスの良し悪しを最終的に決定する権利は顧客側にあります。