つまり、企業活動の真の源泉は、顧客にあると言えるわけです。
ならば、顧客との接点で顧客のニーズを聴くことができるポジションこそが、“真の川上領域”として、経営の意思決定に作用する中核的な役割を担っていくのは当然とも言えますね。
さらに、米国のケロッグやユニリーバなどの最先端企業では、こういった組織に、DSP事業者から直接メディアバイイングを行う「プライベート・トレーディング」という機能をも備えていくといいます。
日本の多くの企業も、こういった動きに急速に対応しようとしているように見えます。
とにかく「デジタルセンター」的な組織を立ち上げ、これまで社内のあちこちに散らばっていた、デジタル領域に知見のある人材を招集するのです。
メンバーに抜擢された方たちは、急に声を掛けられて、いきなり社の中心的な役割を担ったという感じかもしれません。
またこういった社内のメンバーに加えて、外部から専門分野のスペシャリストも招集しているケースもよく耳にします。
機能はインハウス形式で設置して、その運用は外部スタッフを含めたコラボレーションチームで進めていこうというわけです。
僕も、あるクライアントに呼ばれて行ってみたら、その場には他のエージェンシーの人も呼ばれていました(知っている人でした)。
そしてクライアントからは「一緒に協力してやっていってほしい」とのこと。
今はお互いの役割を模索しながら進めている段階ですが、これまでの広告会社の常識では考えられなかったチーム編成だと思います。
ところで、また別のクライアントのデジタル部門からこうしたマーケティングセンター構想を相談されたとき、こんな提案をしたことがあります。
「組織名から『デジタル』を外すことを目標にしましょう」
デジタルは目的ではなく、あくまで手法です。
手法であるはずの「デジタル」自体が組織の名称になるのは、その企業がデジタル化に乗り遅れている証拠かもしれません。
例えば、グローバル化を進めている途中段階の企業は、社内に「グローバル○○部」とか「国際○○部」という組織を持っています。
逆に全社がグローバル化している企業では、そのような名称の組織は必要ありません。
つまり、「デジタルを企業戦略に活用することを当たり前にしていきましょう」という意図で上記のような提案をしたわけです。
多くの企業が取り組む、デジタルを活用したマーケティングセンター的な構想には、社内にデータや知見を蓄積し、顧客の「インサイト」や、顧客との「エンゲージメント」を追求するという本来の目的があるはずです。
そういった企業で、「デジタル」ではなく、インサイトやエンゲージメントなど本来の目的を名称にした組織が立ち上がるという時代が、そろそろ来ているのかなと思います。