マーケティングノウハウのデフォルト化
コラムの1回目で、日本企業にはそもそも「マーケティング」という機能自体が存在していないのではないか?という問題提起をさせて頂きましたが、それは日本企業が長らく広告会社などの外部パートナーにマーケティングを過度に依存してきた結果、マーケティングという文化が企業内に根付いてこなかったことも要因の一つだと私は考えています。
内需が拡大の途上にあり、かつマス広告全盛の時代においては、それでも十分に機能し、成果をあげることができていました。しかし情報環境が急激に変わるなか、マス広告中心の時代に築かれた戦略やノウハウは行き詰まりを見せはじめ、長い期間をかけて外部パートナーである広告会社に溜めこみ、引き継いできた従来のマス広告をベースとしたマーケティングの資産が、時代の変化によって劣化し、機能しなくなっている「マーケティングノウハウのデフォルト化」という現象が見られるようになりました。
デジタル化を含め、急激に進化するマーケティングソリューションへの対応に、今まで頼りにしてきた外部パートナー側も追い付かず、引き継いできた自社のアセットを時代に合わせた形に適応し最適化してもらうこともままならず、進むべきマーティングの方向性を見失っている企業が多くあります。
広告会社にも求められる転換
一方で広告会社も「代理業から問題解決業に経営のモデルを転換する」。つまり、タイムやスペースという広告スペースを売ることでコミッションを得るモデルから、広告主の問題を発見し、解決するソリューションを提供することでフィーをチャージするモデルに切り替えるというイノベーションが今、求められています。そもそも「マーケティング」とは、その商品やサービスに関わるステークホルダー全員を巻き込む、事業活動全体のオペレーションをマネジメントしていくことであるべきです。
しかし現状、日本においては、生産から販売、消費までのモノの流れである「商流」とコミュニケーションを中心とした情報の流れである「情流」の2つの流れが統合的に考えられておらず、マーケティング戦略を設計する際に「情流」ばかりに目がいってしまっているケースが多くみられます。
人材の流動性の低い日本において広告会社と事業会社の両方のポジションでマーケティングを経験した人材はそう多くはいません。
事業会社のマーケティング担当者は、「商流」にばかり目が向き、「情流」を広告会社にゆだね、事業会社側でのビジネスの実務経験が乏しい広告会社の担当者はコミュニケーションを中心とした情報の流れである「情流」ばかりに目が向いてしまっている。そんな外部依存指向の強いクライアントと、広告会社の担当者同士のチームが考えるマーケティング戦略に高いパフォーマンスを求めるのは難しいのではないでしょうか。