ミラノサローネ2014レポート VOL.3——体験するデザイン

4月8日からスタートした「ミラノサローネ2014」。
メイン会場のみならず、ミラノ市内中心エリアのインテリアショップやメーカーのショールーム、ギャラリーなどでも、さまざまなイベントが開催される、まさに“デザインのお祭り”です。
このイベントに2012年より参加しているグラフィックデザイナー 柿木原政広さんに、現地からレポートしてもらいます。

【ミラノサローネ2014レポート by 柿木原政広(10inc.)】
VOL.1——夜中まで笑い声が絶えないデザインのお祭り
VOL.2——歴史とデザイン
VOL.3——体験するデザイン この記事です


柿木原政広(10inc.)

ミラノサローネでは、街中で多くの場所で展示が行われています。もちろん当たり外れがあり、時間がない中、つまらない物を見てしまったときに悔しい気持ちになります。しかし、そこを見ると選んだのは自分だと言い聞かせながら一日中歩いてパンパンの足を引きずりながら次を目指す姿は、デザインの巡礼者のようでもあります。

そんなサローネ最終日、たまたま入った展示が最高でした。ECAL大学、スイスの大学なのですが技術と展示とアイデアがバランスよく、教授陣がきっと優秀なんだろうなと勝手に予想しながら作品を見ていました。
最初の作品はお皿が倒れずにくるくるっと廻り続けています。不思議なので触ってみると見た目と違い思う通りに動かず何か強い振動が手を伝わってくる。
セグウェイと同じ仕組みなのかなと勝手に決めつけて、次に横を見るとサボテンを触りながらみんなが笑っています。近づくと触ったサボテンが鳴いていて、みんなペットのようにやさしくなでていました。
テクノロジーを使ったシンプルなアイデアですが、簡単なテクノロジーによる新しい体験が気持ちよく、今の時代に大切な何かが含まれている気がしました。優秀な大学生に脱帽。

自分ごとですが、今回のサローネはロッサーナ オルランディでRoccaというカードゲームの展示をしました。やはり簡単なテクノロジーのお世話になっていて、テーブルプロジェクションという体感映像作品を展示しました。
出展者と見学者という2つの立場でサローネを見ると、いろいろなことが見えてきます。特に感じたのが継続の重要性です、日本企業がサローネに出展すると打ち上げ花火的な作品が多く、出展が続かないという話を現地で聞きました。継続することで信頼関係を築く、基本的なことですが、その重要性を感じる今年のサローネでした。

「ECAL大学」

スイスの芸術大学であるECAL大学の展示の様子。回転し続ける器、触ると鳴くサボテンなど、テクノロジーを使ったプロダクトが発表されていた。

「Rocca」

ロッサーナ オルランディで発表した「Rocca」の新作。テーブルプロジェクションは、シカクの大久保兄弟によるもの。

柿木原政広(10inc.)
1970年広島県生まれ。アートディレクター。ドラフトを経て2007年に株式会社10(テン)を設立。主な作品にsingingAEON、まいにちAEON CARD、R.O.Uのブランディング、東京国際映画祭、静岡市美術館、松竹芸能株式会社、富士中央幼稚園の企業デザイン。2013年カードゲーム「Rocca」がフランス国立図書館にパーマネントコレクションに。本年度ミラノでは、広島のマルニ木工と制作したRocca SPIELEの新作「Decco」をお披露目した。

【ミラノサローネ2014レポート by 柿木原政広(10inc.)】
VOL.1——夜中まで笑い声が絶えないデザインのお祭り
VOL.2——歴史とデザイン
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