【前回のコラム】「そろそろ、組織名から「デジタル」を外そう!」はこちら
テクノロジーと広告は、切っても切れない関係です。
テクノロジーの進化に伴って、人間のコミュニケーション手法が変わっていくからです。
すでに当たり前の存在になりすぎて、その実感がないかもしれませんが、テレビやラジオだって、それまでのコミュニケーションのあり方を根底からひっくり返したテクノロジーですよね。
今さらですが、「IT」とはインフォメーション・テクノロジーのこと。
「IT革命」などと言われるように、広告と切っても切れない関係のものに革命が起きたのですから、広告にも革命が起きるのは当たり前のことなのでしょう。
すでに感覚が麻痺してきていますが、この10年のインターネットとそのデバイスを取り巻くテクノロジーの進化は、凄まじいものです。
もはや、人類が想像もできなかった領域に踏み込んでいる状況です。
誰もがモバイルやウェアラブルデバイスを携帯し、カメラ、音声や生体認識、SNSからAR(拡張現実)のようなものまで、これほどまでにいろんなユーザー体験が提供されるなんて、本当に考えられなかったことです(なんだか、年寄りのような言い方になりますが)。
今も次々と新しいテクノロジーによるサービスが出てきていて、そのスピードは一段落するどころか、ますます加速しているようにも感じます。
もちろん広告業界では、こういった新しいテクノロジーの開発により、これまでになかったコミュニケーションが実現されることは大歓迎です。
この業界ではよく「Wowの提供」という言葉を使いますが、これはユーザーに思わず声が上がるような感動体験を提供することを指しています。
新しいテクノロジーは、このWowの提供に大きく貢献してくれるのです。
しかし、「ちょっと違うかな」というものもよく目にするようになりました。
新しいテクノロジーが生み出す体験そのものを、エンターテインメントとして提供しているような場合です。
「Wowの提供」とは何か。そもそもの理解に誤解があるのかもしれません。
自戒も込めてですが、企画の現場でも、こういった誤解が払拭されぬまま話が進んでしまうことがあります。
「フェイスブックは古いな、VINEを使おう」
「3Dプリンターなら話題になるね」
「もうウェアラブルデバイスの自社開発しかないでしょう」
こんな感じで、体験そのもののエンターテインメント性や新規性で「Wow」をつくろうとしてしまうわけです。
でもこういった企画は、テクノロジーの本質的な活用とは言えませんよね。
真の「Wow」は、ユーザーのニーズに新しい形で応えられたときに生まれるものです。
これまで「そんなことは無理だ」と思われていた願いや望みが、テクノロジーの力で解決されたとき、人々はその価値を実感することになります。
ならば、やはり企画はユーザーのインサイトありきです。
そこに新しいソリューションを提供できてこそ、「Wow」な体験が生まれるわけです。