いま、本当に日本企業にCMOは必要か?

【前回のコラム】「外部パートナーと最適なチームを組めていますか?」はこちら

マーケティングは消費者のエモーショナル、右脳に訴えかけるアートの要素と左脳に訴えかけるサイエンスの要素が融合した、幅広く総合的な活動です。「合理性」と「創造性」という、一見相反するようなふたつの活動が組み合わさった包括的な活動であり、それらをとりまとめて成功に導くためには、広範なスキルが必要とされます。

ところが多くの日本企業では、マーケティングがこのような活動であることが認識されていません。優れた製品をつくることや魅力的なテレビCMをつくることは「クリエイティブ」と認識されていても、「マーケティング自体がクリエイティブな活動である」と思っている、特にメーカーのマーケティング担当者はまだ少ないのではないでしょうか。

しかし、欧米のグローバル企業では「マーケティング」は高度な専門知識とスキル、そしてクリエイティビティが要求される専門職とみなされ、いったんそのポジションを得るとその道を究めることになります。そこで担当者の異動の多い日本と違い、企業内にマーケティングのノウハウやナレッジが蓄積されていきます。

“カリスマ社長”型の弊害

その違いは組織のあり方や人事にも表れています。多くのグローバル企業ではCMO(マーケティング最高責任者)という役職があり、マーケティング活動を横断的に統括しています。

日本でも近年CMOの必要性が話題になっていますが、すでにCMOがいる企業はごくまれです。各部門のマーケティング活動を、横断的に統括している責任者がおらず、マーケティング予算の最終承認は事業部門や広告部門の担当役員や社長決裁であることも珍しくありません。

しかし30代、40代のCEOや上級役員が多く存在する海外の企業とは異なり、一般的な日本企業では、そのポジションに登りつめるには50代以上になってしまいます。マス広告全盛期の成功体験が染みついている50代以上の最終権限者に、日々進化し続ける最新のマーケティングソリューションを説明して理解を得るのは容易ではありません

CMOの役割は幅広く、奥行きも深い仕事ですが、日本ではカリスマ的な創業社長がCMOの役割を兼ねているケースがしばしば見られます。直近ではファーストリテイリングの柳井正氏が代表例ですが、古くはソニーの盛田昭夫氏などがそういった存在でした。

しかしCEO兼務型の場合、社長のカリスマ性と、マーケティングのナレッジやノウハウが未分化で、企業内でのナレッジとしての共有化が進まず、マーケティングの仕組みとして浸透しにくくなる傾向があります。

また、企業はある程度の規模になるとどうしても部門間の壁が高くなります。カリスマ社長の強力なリーダーシップの下、「一枚岩にまとまって」というのは創業社長が退くと存続が難しくなり、縦割りの弊害に悩むことになるのです。

では、そうした弊害を克服し、マーケティングを全体最適化していくにはどうしたらいいのでしょうか。最適な解はやはりCMOを設置することなのでしょうか。

次ページ 「部門横断型のプロジェクトチームをつくる」に続く

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藤田 康人(インテグレート代表取締役CEO)
藤田 康人(インテグレート代表取締役CEO)

1964年東京都生まれ。慶應義塾大学を卒業後、味の素に入社。1992年、ザイロフィンファーイースト社(現ダニスコジャパン)を、フィンランド人の社長と2人で設立。1997年にキシリトールを日本に初めて導入し、素材メーカーの立場からキシリトール・ブームを仕掛けた。この結果、ガムを中心とするキシリトール製品市場はゼロから2000億円規模へと成長。2007年5月、IMC(Integrated Marketing Communication:統合型マーケティング)プランニングを実践する日本初のプランニングブティックとして、マーケティングエージェンシー、インテグレートを設立。代表取締役CEOに就任。著書に『どう伝わったら、買いたくなるか』(ダイヤモンド社)、『99.9%成功するしかけ』(かんき出版)などがある。2014年4月7日(月)に宣伝会議から最新刊『THE REAL MARKETING―売れ続ける仕組みの本質」が刊行予定。

藤田 康人(インテグレート代表取締役CEO)

1964年東京都生まれ。慶應義塾大学を卒業後、味の素に入社。1992年、ザイロフィンファーイースト社(現ダニスコジャパン)を、フィンランド人の社長と2人で設立。1997年にキシリトールを日本に初めて導入し、素材メーカーの立場からキシリトール・ブームを仕掛けた。この結果、ガムを中心とするキシリトール製品市場はゼロから2000億円規模へと成長。2007年5月、IMC(Integrated Marketing Communication:統合型マーケティング)プランニングを実践する日本初のプランニングブティックとして、マーケティングエージェンシー、インテグレートを設立。代表取締役CEOに就任。著書に『どう伝わったら、買いたくなるか』(ダイヤモンド社)、『99.9%成功するしかけ』(かんき出版)などがある。2014年4月7日(月)に宣伝会議から最新刊『THE REAL MARKETING―売れ続ける仕組みの本質」が刊行予定。

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