いま、本当に日本企業にCMOは必要か?

部門横断型のプロジェクトチームをつくる

私は、何ごとも個人よりも組織での決定を優先する日本企業の風土、文化や、多くの企業の縦割りの組織形態、細分化された権限の実情を考えると日本企業ではCMO設置にはまだかなりの準備時間が必要だと感じています。

すでに私たちも外部パートナーとして、いくつかのマーケティング・プロセスの革新をテーマとしたプロジェクトに参加しています。

CMO設置を見据えて本格的に組織の再編成から取り組むケースでは、縦割りで権限を分散したオペレーションに慣れ切った日本企業において、中央集権的な意思決定をする組織へと再構築するには、思いのほか社内の抵抗も多く難易度が高いことを実感しています。

CMO設置以前に、近代的なIMCの思想をマーケティングに注入し、統合的に意思決定できる組織の改編や仕組みづくりや、専門性を高める社内教育・人材育成システムなどなくして、CMO導入の社内コンセンサスを得るのは非常に困難です。

そこで、ここ最近では縦割りの組織を大きく変えることなく、まずは社内のプロジェクトやタスクフォーフレベルでの社内横断的な統合マーケティングプロジェクトを実施していく可能性を模索する動きが徐々に出てきています。

この場合、各部門の内部にマーケティング担当者やマーケティング会議などの意思決定システムを設けます。もう一つはITを活用して、ビジネス・プロセスとマーケティング・プロセスを統合するデータ共有システムを社内インフラ化することです。これらを両輪でまわしていくことで、統合的なオペレーションが可能になります。

私はCMO設置を見据えた大掛かりな組織改編等よりもまずは早急に、部門横断型のプロジェクト・チームをつくるという方法を取るべきだと思います。目的はオペレーションを統合し、全体最適化を実現していくことなので、CMOという存在にあえてこだわる必要はないと考えるからです。

日本に合うのは“バーチャル”CMO

ただし、プロジェクト・チーム型の場合でも、強力な権限を委譲されたチーム・リーダーは必要です。結果としてそのポジションの人材がバーチャルでも各プロジェクトにおいてCMO的な役割を果たせるような仕組みを導入していけばいいのです。

各企業の現状のマーケティングの仕組み、組織形態によってバリエーションは様々ではありますが組織改編をしなくてもプロジェクトの組み上げ方でいくらでも最適なフォーメーションは組めるのではないでしょうか。

私たちが事業会社から相談を受ける際には、多くの場合、最初はマーケティング部門の方から話が持ち込まれます。そして、マーケティングの課題を詳しくヒアリングしていくと、部門横断的なプロジェクト・チームをつくることが課題解決への近道であることが少なくありません。そこで、研究開発部門や営業部門などからキーマンに参加してもらい、オペレーションを統合していくのです。

このアプローチでマーケティング上のすべてのオペレーションをスムーズに展開することができれば、目標設定や行動計画も立てやすく、各部門にとってもプラスになります。会社の業績は各部門のパフォーマンスの成果ですから、こうしたやり方をプロジェクト単位で積み上げていけば、結果として、会社全体の業績が伸びていきます。

この部門横断型のプロジェクト・チームとバーチャルCMOのあり方については今後の日本のマーケティング界において最も議論されるべきテーマではないかと考えられます。

本当に日本企業にCMOは必要か?今こそこのテーマを真正面から議論することなしに、日本のマーケティングのあるべき未来は見えてこないのではないでしょうか。

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藤田 康人(インテグレート代表取締役CEO)
藤田 康人(インテグレート代表取締役CEO)

1964年東京都生まれ。慶應義塾大学を卒業後、味の素に入社。1992年、ザイロフィンファーイースト社(現ダニスコジャパン)を、フィンランド人の社長と2人で設立。1997年にキシリトールを日本に初めて導入し、素材メーカーの立場からキシリトール・ブームを仕掛けた。この結果、ガムを中心とするキシリトール製品市場はゼロから2000億円規模へと成長。2007年5月、IMC(Integrated Marketing Communication:統合型マーケティング)プランニングを実践する日本初のプランニングブティックとして、マーケティングエージェンシー、インテグレートを設立。代表取締役CEOに就任。著書に『どう伝わったら、買いたくなるか』(ダイヤモンド社)、『99.9%成功するしかけ』(かんき出版)などがある。2014年4月7日(月)に宣伝会議から最新刊『THE REAL MARKETING―売れ続ける仕組みの本質」が刊行予定。

藤田 康人(インテグレート代表取締役CEO)

1964年東京都生まれ。慶應義塾大学を卒業後、味の素に入社。1992年、ザイロフィンファーイースト社(現ダニスコジャパン)を、フィンランド人の社長と2人で設立。1997年にキシリトールを日本に初めて導入し、素材メーカーの立場からキシリトール・ブームを仕掛けた。この結果、ガムを中心とするキシリトール製品市場はゼロから2000億円規模へと成長。2007年5月、IMC(Integrated Marketing Communication:統合型マーケティング)プランニングを実践する日本初のプランニングブティックとして、マーケティングエージェンシー、インテグレートを設立。代表取締役CEOに就任。著書に『どう伝わったら、買いたくなるか』(ダイヤモンド社)、『99.9%成功するしかけ』(かんき出版)などがある。2014年4月7日(月)に宣伝会議から最新刊『THE REAL MARKETING―売れ続ける仕組みの本質」が刊行予定。

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