国際的に優れたアイデアを顕彰する「Tomorrow Awards 2014」の受賞作がこのほど発表され、Yahoo!Japanのプロモーション「さわれる検索」ほか5つのアイデアが表彰された。同賞はカテゴリー分けをしないのが特徴。「未来を変える要素はあるか」といった審査基準で、アイデアを評価していく。
「さわれる検索」は3Dプリンターとネットを組み合わせ、「検索したものをさわれる形で出力する」サービスだ。例えば、「きりん」と音声入力すると、ネットから3Dデータを検索し、3Dモデルが出力する。企画に携わった博報堂ケトルの畑中翔太さんは「Tomorrow Awards 2014」の表彰会場で、「これ以上の3Dプリンターの企画はないよ」とほかの参加者から声をかけられたという。
「Tomorrow Awardsで審査員たちが繰り返していたのは、そのアイデアが、『On-Trend(今のトレンド)』であるとともに、『Being of the future(そのトレンドだけで終わらず、未来への続くものとなる)』である必要があるということでした」と畑中さんは会場の様子を振り返る。
「アイデア自体も評価されるのですが、周囲に影響を与え、真似されたり、より発展させられたりるようになってこそ、革新的なアイデアと言える。そんな見方を審査員をはじめ、皆が共通で抱いていたように感じました」。特に、特別審査員「Monster Judge」の一人、ツイッターのグローバル・ブランド・ストラテジー担当副社長ジョエル・ルーネンフェルドさんは、「どれだけアイデアがコンテンツとなり世界の隅々で話題になるかが重要だ」と述べたという。
そのほか4つの受賞作は以下のとおり(カッコ内は手がけた企業)。
米国「JUST A REFLEKTOR」(Google Creative Lab)
カナダのロックバンド「アーケード・ファイア」の楽曲「Reflektor」のテーマを、パソコンと、スマートフォンなど2つのデバイスを同期させて楽しむインタラクティブ・ショートフィルム。スマホをPCにかざすと、劇中の反射光を操作できる。また、Webカメラを通じて、視聴者が動画の中に登場するしかけも。従来的な映像の表現手法と、Webテクノロジーを取り合わせた美しさが評価された。
オランダ「SWEETIE」(Lemz)
連日繰り返される、Webのストリーミング動画配信を悪用した児童買春行為は数万件にも上るという。しかし、ネットワークを介しているため、検挙に至りづらいのが課題だった。そこでLemzは、「スウィーティ」と名づけた10歳のフィリピン人少女の3DCGモデルを作成。公開チャットルームにアクセスし、リアルに挙動する「スウィーティ」で応対しながら買春行為を狙う2万人のユーザーとチャットするという大胆な施策に打って出た。その過程で、犯罪を示す証拠や彼らについての情報を集め、結果、2カ月間で、現行犯逮捕と、71カ国1000人の被疑者を特定したという。
「FOLLOW NATTJOUREN’S ROAD TO CHRISTMAS」(Garbergs)
スウェーデンのNPO「ストックホルム・スタッズミッション」による寄付金獲得のためのキャンペーン。同NPOはホームレス支援をしており、毎晩、ストックホルム市街の通りを見まわっている。このキャンペーン「FOLLOW NATTJOUREN’S ROAD TO CHRISTMAS」では、まず、特設サイトで夜警の過程をサイトの地図上で追い、Twitter投稿でレポート。さらにTwitter投稿は、街ナカのデジタルサイネージにも表示されたほか、プリント広告として出稿された。ストックホルム市街の現状をリアルタイムで伝えたことで、団体の活動を差異化することに成功した。
「FOLLY PLUGGED-IN LIVE THEATER PERFORMANCE」(VML)
米カンザス・シティで100年以上の歴史を持つ劇場「フォリー・シアター」のための企画。フォリー・シアターでも、ほかの劇場と同様、新規の、特に若い観客を呼びこむことが課題になっていた。ターゲットとなる若年層は、スマートフォンに夢中だ。そこでフォリー・シアターは、上演中は普通、スマホの電源を落とすように案内するところを、むしろ、スマホを用いて、ステージ上の光景を積極的に広めるように告知したのだ。着席前にダウンロードするよう促される専用アプリには、出演者のコスチュームや、舞台装置、歌を評価したりなど、観客が演目に参加できる要素を盛り込んだ。