【前回の記事「団体ツアーVS個人旅行、これからのインバウンドで伸びるのは、どっち?――インバウンド販促の“秘伝”④後編」はこちら】
訪日外国人向けの免税制度が今年の10月1日から大きく変わります。実に62年ぶりの大改定です。日本で始めて、外国人免税制度ができたのは、戦後すぐの1952年のことでした。日本は第二次世界大戦で敗戦国となり、サンフランシスコ条約に批准するまで、独立国の地位を奪われており、外国人に対する課税権を失っていました。それが独立後、外国人にも晴れて物品税を課すことができるようになりました。しかし、課税権の復活は必ずしもいい面だけではなかったのです。それまで占領軍(主に米軍)関係者は免税特権を与えられていたので、彼らには税金が免除されていたのです。それが突然何十%もの物品税がかかるようになると、誰も国内の贅沢品(時計や宝飾品、カメラ等)を買わなくなるだろうと関係者みんなが恐れて大きな議論となり、その結果、当時の政府は急遽外国人免税制度を作ったのです。
その後、わが国は89年に物品税を取りやめて、一般消費税を導入し、すべての商品販売・サービスに対し課税することになり、また最初は3%、その後5%、そして今年の春、ご存知のようについに税率を8%へと上げてきました。ところが、89年の消費税導入の際、外国人に対する免税は、52年の物品税免税の制度をそのまま踏襲してしまったため、従来のとおり、時計宝飾品や家電製品など、使っても無くならない物品(非消耗品)だけを免税対象にしていました。化粧品や食品や酒や飲み物などの消耗品は、旅行中に使ってしまって(つまり消費してしまって)本国に持ち帰らない=輸出されない恐れがあったため、消費税免税の対象に入れなかったのです。しかし本来、消費税は、国内で消費することに対して課税する税金ですから、最終的に輸出される物品に対し、世界中の大半の国は互いに課税していません。日本の政府も、いよいよ本格的な観光立国時代を迎え、外国人観光客誘致に本気で取り組むようになり、外国人観光客やインバウンド産業関係者の全品免税への熱心な働きかけを受けて、上述のとおり今秋10月1日から実施することになりました。これからは、訪日外国人観光客であれば、一定の条件のもとでは、どんな商品を買っても全品免税になるのです。
これは、インバウンド販促の面からみると、とてつもなく活気的なことです。実は私自身もこの免税改革の議論に、民間側の委員の一人として関わってきましたが、立法府・行政府の皆さん、そして民間の免税協議会のメンバーの皆さんの改正実現にむけた必死の努力には本当に頭の下がる思いでした。たとえ、一部でも法律を改正するというのが、こんなにも大変なことなのかということを改めて思い知ったのです。
ちなみに、一定の条件とは、次のとおりです〔あくまでも簡易な説明です〕。
免税免許を受けた物販の店舗で買物をすること、
日本上陸後6ヶ月未満の短期滞在の外国人であること〔在日外国人はNG〕、
パスポートを提示し、購入記録表等にサインし、購入後30日以内に海外に輸出することを誓約すること
既存免税対象物品〔非消耗品〕だけで同一日、同一店で1万円以上の買い上げ、新規対象物品〔消耗品〕だけで5千円以上50万円未満の買い上げであること
新規対象物品〔消耗品〕は、国外に出るまで開封できない梱包を施されること
それゆえ、外国人観光客は、免税免許を取得済みの物販店舗でしか免税にはなりません。ちなみに、日本には何十万もの小売店(物販店)がありますが、現状免税店は全国にいまだ4622店舗〔13年4月現在〕しかありません。つまり、いまだほんの数%の店舗でしか、外客免税はできないのです。ほとんどの小売店は免税免許をもっていないのです。去年1年間で訪日外国人は1036万人。これからはますます増え続けます。今秋以降、全品免税になれば、外客のニーズもそれに連動していよいよ増えてきます。免税店の数、免許の数が圧倒的に足りなくなることが懸念されます。
政府は、経済産業省や国土交通省の地方出先機関にそれぞれ相談窓口を設けて、免税免許取得促進をはかるようですが、興味のある方は、ぜひ今すぐにでも積極的に申請方法に関する情報をネット等で調べて免許を取得していただきたいと思います。(なお、わがドン・キホーテは6年前から、苦労して免許申請を行ってきており、いまではおかげさまで、全国250店舗で免税の免許を取得しています!)