「私の広告観」
ヒット作品や話題の商品の作り手など、社会に大きな影響を与える有識者の方々に、ご自身のこれまでのキャリアや現在の仕事・取り組み、また大切にしている姿勢や考え方について伺います。
人の心をつかみ、共感を得るためのカギとなることとは? 広告やメディア、コミュニケーションが持つ可能性や、現在抱えている課題とは?
各界を代表する"オピニオンリーダー"へのインタビューを通して、読者にアイデア・仕事のヒントを提供することをめざす、『宣伝会議』の連載企画です。
角野栄子さん/作家
『魔女の宅急便』の原作者・角野栄子さんがこのほど、旭日小綬章を受章した。1970年に35歳でデビュー以後、作家として活躍する角野さんだが、実は作家志望だったわけではない。学生時代からグラフィックデザインや広告への造詣が深く、デザイナーに憧れていた。
(「宣伝会議」2014年4月号誌面より抜粋)
かどの・えいこ/東京生まれ。大学卒業後、出版社に勤務。25歳からのブラジル滞在の体験を描いた『ルイジンニョ少年 ブラジルをたずねて』で作家デビュー。1982年『大どろぼうブラブラ氏』で産経児童出版文化賞大賞、84年『わたしのママはしずかさん』で路傍の石文学賞、『ズボン船長さんの話』で旺文社児童文学賞、『おはいんなさい えりまきに』で産経児童出版文化賞、85年『魔女の宅急便』で野間児童文芸賞など多数受賞。『魔女の宅急便』はシリーズ化し、2009年に第6巻で完結した。1989年のアニメ映画化、93年のミュージカル化に続き、2014年3月には実写映画として全国でロードショー公開。ブラジルに住む少女の成長物語『ナーダという名の少女』を2月に発売。
キキの物語を書き続けた24年
「1989年に宮崎(駿)さんの手によってアニメ映画化されて一番良かったなと思うのは、世界中の皆さんの元へキキとジジが羽ばたいていったこと。タイトルは『Kiki’s Delivery Service』だった。日本の童話が世界中で翻訳されて出版されるのはとても難しいことでしょう?原作者としてアニメの人気ぶりにはすごく驚いたけど、やっぱりうれしかったわね」。
1989年にスタジオジブリによるアニメ映画化、93年に蜷川幸雄さんの演出によりミュージカル化された『魔女の宅急便』。13歳の主人公・キキが黒猫のジジと共に旅立ち、魔女として成長する姿を描くストーリーは、日本国内のみならず世界中で愛されてきた。
原作者・角野栄子さんによる『魔女の宅急便』が出版されたのは1985年のこと。その後、角野さんは24年かけてキキとジジの物語を紡ぎつづけた。2009年に第6巻「それぞれの旅立ち」でシリーズは完結し、13歳だったキキは30代半ばに。結婚を経て、双子の母親として生きるまで成長している。
そして作品誕生から28年経った今年、初となる実写化が実現。3月1日から全国で映画公開されている。「実写映画はミュージカルを手掛けたスタッフの長年の夢だったの。原作を愛してくれる人、アニメ映画が好きな人、それぞれのファンの皆さんが見たら実写化に対して複雑な思いはあるかもしれない。でもね、今回は”生身の人間が空を飛ぶ”っていう面白さをとにかく見てほしい!」。
きらきらと瞳を輝かせながら、自身の作品と登場人物への思いを愛情たっぷりに語る角野さん。一体いつから童話作家への道を志したのかと尋ねると、「実はね、文章を書くことにまったく興味はなくて。学生時代はデザイナーになりたかったのよ」と、意外な答えが返ってきた。