緊張感があって、ダイバーシティがある組織が強い組織
廣田:大企業の方が規模のメリットが働くからチャンスがあるという話でしたが、阿部先生は良い組織ってどういう組織だと思いますか。
阿部:良い組織は、強い組織ですよね。良い悪いで言うと、多分、世の中で一番良い組織は岐阜のヤンキーがつくる組織だと思います。居心地の良い組織という意味で、岐阜のヤンキーは集まって、みんな同じようなことを考えて。
廣田:うぇーい! とか言っている。
阿部:集まってうぇーい! って言っているのが多分、一番居心地が良い。同じことを考えているから意志の疎通も簡単です。でも、岐阜のヤンキーは生産性は限りなく低い。新しい物を生みださないからイノベーションを起こせない。
そう考えると、強い組織を作るためには単に居心地が良いだけではまずいわけです。やっぱり緊張感があって、中できちんと競争が起きていて、ダイバーシティがあってっていう組織が強い組織なんじゃないですかね。
廣田:居心地の良さと強さっていうのは、両立しないのかもしれないですね。どこかで緊張感が必要ということですね。
阿部:両立しないですね。東大の研究室にいるときのストレスの大きさは半端ない。相当ヤバい。やっぱり強さと緊張感っていうのは正比例するので、緊張感がない組織は潰れます。居心地が良いだけだったら、岐阜のヤンキーの「うぇーい! 」でいいわけです。でも、それだと生産性が低い。生産性を上げようと思ったら、緊張感のある組織の中にいないといけないから精神的なダメージも大きい。低賃金でうぇーい! と鬱病で高賃金かどっちかを選べというのが今の時代ということです。
廣田:どっちもツラいですね(苦笑)。
阿部:ダイバーシティがあって緊張感のある組織と、ダイバーシティがなくて居心地の良い組織の2種類があって、個人単位で考えると前者が企業で、後者が家庭なんだと思います。優秀なサラリーマンや企業人はそれをうまく使い分けて精神的な安定を図っていると思います。
廣田:気楽で楽しいヤンキー的なものと、緊張感はあるけれど苦しそうなものというのも二項対立かなと思っていて、どっちも歪みは出てくると思うんですけど、第3の道はないのでしょうか。格差はあるかもしれないけど、ちゃんとコミュニケーションは発生するような別の選択肢が出てきて働きやすくなる可能性はありますか。どういう社会がいいのかという話にもつながります。
阿部:今の社会って、例えば大学生を見ていても、より熾烈になった受験戦争を生き残ってきた子たちと、物を知らない子と二極化していると思います。同じ大学生でも、大学によって全然違って、同じ若者とひとくくりにできないくらいに意識も違うし、緊張感も違う。意識の高い学生は地元密着型のレゲエとかは絶対聞かないし、むしろ蔑んでいます。
日本には自己主張が強いヒップホップ的な緊張感が根付かなくて、レゲエ的なゆるさみたいなものが地方の共同体意識と密接に結びつきやすい。
そういうところで完全に二極化しているのが日本だと思います。で、第3の道があるかという話は、難しいですね。このまま二極化が進んでいくと、アメリカのようなかたちの格差社会になるのではと思います。