時代背景にマッチしたインサイト
そもそもコンテンツとしての広がりに関しては「ディズニーのプリンセスもの」や「ミュージカル仕立て」といった“王道”であり、当然ある程度のヒットは予測できるという側面があるだろう。しかし、筆者はそれ以上にこの映画全体、そして特に挿入歌の「Let it go~ありのままで~」は的確に今の時代背景にマッチしたインサイトを捉えていると考えている。
筆者の考えるそのインサイトとは「女性の社会進出」である。これは世界的には2013年3月(日本語版の出版は6月)にフェイスブックのCOOであるシェリル・サンドバーグ氏が執筆した「LEAN IN(リーン・イン) 女性、仕事、リーダーへの意欲」というベストセラー本が大きく影響しているのではないかと考えている。
また日本国内においては2013年4月19日安倍総理「成長戦略スピーチ」で述べられている成長戦略の中核である「女性の活躍」が挙げられるのではないであろうか?
安倍首相はその中で「『社会のあらゆる分野で2020年までに指導的地位に女性が占める割合を30%以上とする』という大きな目標があります。先ほど、経済三団体に、『全上場企業において、積極的に役員・管理職に女性を登用していただきたい。まずは、役員に、一人は女性を登用していただきたい』と要請しました」と具体的に述べているのである。
映画をまだ見ていない方のためにここでは詳しくは書かないが、アナ雪の主役は女王とその妹であり「Let it go~ありのままで~」は女王が人に迷惑をかけるとして今まで隠してきた能力を、人里離れた山の中で自由に発揮する瞬間に歌う歌なのである。
「Let it go」とは英語で「解き放つ」という意味を含んでおり、まさに女性がその能力を社会的に解き放つということにつながっているのではなかろうか。
このようなヒットパターンで筆者が考える近い例としては2000年の「世界に一つだけの花」である。
この曲は2003年3月にリリースされるとともに大ヒットしたが、その主だった内容は「No.1にならなくてもいい、もともと特別なOnly one」という歌詞に代表されるだろう。
そしてこの時の時代のインサイトには2002年度より導入された「ゆとり教育」の影響が強いと考えられる。文部科学省が導入した制度であるが目玉は他人との比較で決まる「相対評価(No.1)」から「絶対評価(Only one)」に変更したことである。そこに「世界に一つだけの花」の歌詞が上手くマッチして大ヒットになったということを考えている。
ヒットするプロモーションの裏には多くの場合、時代のインサイトが作用しているケースが多いと昨年ヒットした「半沢直樹」や2011年にヒットした「家政婦のミタ」に関しての分析は筆者のコラム「半沢直樹」のヒットの背景を考えてみたを参照いただきたい。
上記で検証してきたようにアナ雪はヒットするコンテンツとしての各種要件を満たしているのであるが、しかし、今回筆者が特筆すべきはソーシャル時代にマッチしたコンテンツ作りやPR、ソーシャルマーケティングの実施があげられるであろう。
それに関しては次回のコラムで詳しく紹介したいと考えている。