本欄では、広告主、広告業、メディア、クリエイターなどの垣根を超えて広告界の未来を本音で語りつくした2日間のセミナーの一部を紹介します。
【A4】4月15日(火) 14:00〜15:00
通したい企画、通せない企画
<パネラー>
- 株式会社タカラトミー カード&トイ事業部 トイゲームチーム 主任 武田 誠 氏
- 雪印メグミルク株式会社 市乳事業部 飲料グループ プロジェクトリーダー 竹谷 和章(かずあき) 氏
<モデレーター>
- 月刊『販促会議』中澤 圭介
社内プレゼンの前に、キーマン全員の了解を得ること
——タカラトミーさんが最近実施したエッジのきいた企画とは?
武田:弊社は40年以上の歴史で1300万台超の販売数を誇る「人生ゲーム」という商品を展開していますが、2013年に鹿児島県の与論島を舞台にした『リアル人生ゲーム』というイベントを仕掛けました。きっかけは島の子どもが「人生ゲーム」で遊んでいるときに「島の形がルーレットに似ている」と気づいて、与論島の方が「一緒に何かできないか」と連絡をくださったこと。
2012年当時、与論島は台風の被害で観光業も大きなダメージを受けていました。弊社も人生ゲームで「玩具の枠を超えたことを積極的に行いたい」という目標を掲げていまして、島の現状を知ってますます何かコラボしたいと思うようになりました。
新入社員のころから「現場で現状を知れ」と言われていましたので、思いたったらすぐ行動の精神で現地に向かいました。
現地入りすると、やはりあれをやろうこれやろうと面白いアイディアが次々に出てきました。なかには、島の名前を変えたり仮想紙幣を使ったりと、大胆なアイディアもありました。
最終的にはそれらを取りまとめ、事前に町長含め島のすべてのキーマンに話をすることで「これなら実施可能」と了承を得ることに成功しました。
ただ、この段階では社内のプレゼンで企画のゴーサインは出ていませんので、島の方には「通ったら」と前置きしています。ただ、それによって、社内プレゼンで「こんなこと、本当にできるの?」と言われても、「すでに了承は得ています」と言えました。
このように、社内プレゼンで何を聞かれても良いよう万全を期すのも企画を通すための秘訣です。それもあって企画は無事に通り、『リアル人生ゲーム』は実現しました。おかげさまで、テレビをはじめ様々なメディアで取り上げていただき、下回る見込みであった島の観光客は前年を上回る結果となりました。
ブランドに頼り切っていては、成熟期から衰退するだけ
——雪印コーヒーの課題と取り組みについて教えてください。
竹谷:雪印コーヒーは昨年発売50周年を迎え、1日平均約50万本を愛飲いただいているロングセラー商品なのですが、商品とともに購入者の年齢層が上がっていることが課題でした。
なんとかして20代を中心とした「若年層」への需要喚起を早急に行わなければ、商品・ブランドが衰退してしまうという危機感を抱いていました。とはいえ、単にテレビCMを大量投入しても、そうした若年層には届かないのが現状です。
試行錯誤している中で目に留まったのが、矢野経済研究所が発表した「2011 クール・ジャパンマーケット/オタク市場の徹底研究」。それによると、我々がターゲットしている層の5人に1人はオタクではないか、と書かれてあったのです。
それをヒントに行ったのが、雪印コーヒー50周年を記念して行われた、商品の擬人化キャラクターをお客さまと一緒に生み出す企画「俺たちのゆきこたんプロジェクト」です。
第一弾のイベントは、公式キャラクターのイラストコンテストを開催し、最終国民投票で17万票という高い関心を集めました。その後、最優秀6作品のイラストを商品にデザインしたスペシャルパッケージを作ったり、『週刊プレイボーイ』さんともタイアップしたりと次々と大胆な挑戦を続けました。
これらはテレビをはじめ様々なメディアで話題になり、若年層にもTwitterやフェイスブックなどで情報が拡散され、公式サイトのPV・ユニークユーザー数と連動して商品出荷数も大幅に伸びました。
今年は、第2弾として6人の「ゆきこたん」の声を担当する“中の人”を募集する「デビュープロジェクト」が進行中です。人気声優の竹達彩奈さん、AKB48の『ヘビーローテーション』を作曲した山崎耀さんらとタイアップして歌手デビューを目指すという内容で、最終審査会は6月中旬、ニコニコチャンネルで生放送の予定です。