風評を払拭して形勢を逆転
——不利な場面では、どのような対応をされましたか。
高谷:投票の直前に、原発問題と招致活動をリンクして報道されたことがありました。東京に対するネガティブなイメージが、海外メディアの中で一気に広がっていったのです。
その時に私がまず行ったのは、記者が集まるプレスセンターへ行って、オープンに状況を聞き、クライシスレベルを把握すること。その結果、記者が感じているクライシスレベルと、私たち広報チームの感触とでは差があり、現場のプレス対応チームが楽観視し過ぎていることが分かりました。
そこで、関係者の協力も得て質疑応答に一層真摯に取り組んだ一方で、日本選手がオリンピックやパラリンピックにおいて、ドーピング違反を犯したことがないという事実を強いトーンで発信するようにしました。
他都市の弱点になる領域でアグレッシブなメッセージを打ち出していくことで、ニュースのヘッドラインを変えていきました。
——オーディエンスを巻き込んで、評判を高めていった施策について教えてください。
森:沿線の方々の手で開業を盛り上げていただくため、Webには印刷して自分で色を塗って作れる旗のテンプレートを用意しました。旗を配るのではなく、地元の方々に思い思いの色を塗って旗を作ってもらい、沿線で振ってもらうような仕掛けをつくったのです。
ところが、これをプレスリリースしましょうと社長へ提案すると、それは駄目だと。これだけは社員が口づてで、沿線の自治体や知り合いなどへ直接お願いするように、と言うのです。
人が集まってくれるかどうかは、社員一人ひとりの努力次第ということですから、非常にプレッシャーになりますよね。となれば、何がしかのアクションを起こさないといけない。自らが行動するように、というトップのメッセージと捉えて必死で取り組みました。その結果、約10万人の方々に、沿道に立って旗を振っていただくことができました。
高谷:ネガティブな事象があった時に、その話をいくら正面から否定しても、世の中の人たちはますます心配になってくるものです。ですから、ネガティブな事象に対しては、良いニュースをできるだけ多く出して、良いニュースの面を少しでも広げていくよう努めたのが、流れを変えるきっかけになったと思います。