【C1】4月15日(火) 10:10~11:10
日本企業でマーケティングがうまくいく組織とは?
<登壇者>
- ピップ株式会社 執行役員 商品開発事業本部 開発営業本部長 兼 マーケティング部 部長 水書 邦之 氏
- 合同会社 西友 マーケティング本部担当 執行役員シニア・バイス・プレジデント 富永 朋信 氏
「スモールサクセス」の積み重ねで変化を起こす
——富永さんは数々の外資企業を経て、西友で「KY(カカクヤスク)」をはじめ、斬新でインパクトのある企画を常に実現し続けています。水書さんも外資企業を経てピップでは「スリムウォーク」などヒット商品を生み出し続けていますが、組織づくりにおいて意識されていることはありますか。
水書:外資系企業の場合、組織の中身を強化しようと思えば、即戦力となる人材を外部から採用して短期間でマーケティング目標を達成しようと取り組むことが多いですよね。
一方、日本企業では、やはり社内の人材を活用していきたいという思いがあります。その場合、外部から入ってきた者が、強引に自分のやり方で進めようとすると軋轢を生んでしまいます。
富永:社内にいるスタッフはそれぞれ、自分流のマーケティングのやり方や期待値を既に築いているわけですからね。そういう各人の思い入れや思い込みを突破して、社内で斬新なアイデアが通るところまで理解を得ていくには、ある程度の時間が必要です。
まずはスタッフに小さな成功体験を積み重ねてもらう、すなわち「スモールサクセス」を経験させることが、非常に大事だと思います。
水書:おっしゃる通りです。責任者として描く方向性はまず示しますが、それを強引に進めようとすると反発が起きますので、「スモールサクセス」のお膳立てをしながら、メンバーが成果を出せるという実感をしてもらうことが重要だと思います。
富永:ちょっと無理のあるストレッチをさせてみて、上手くいくと、社内からも「最近、面白い企画をやっているね!」と評価されて、盛り上がってくるんですよね。そうした経験を積み重ねながら、組織の考え方を変えていくのが良いと思います。
水書:必ずプロパーのスタッフの中にも、経験や年次は関係なくマーケティングセンスを持っている人材がいるんですよね。時間はかかりますが、そういうスタッフを見つけて育てながら全体の士気も上げていく。すると、自然と目指すべきマーケティングを実現する素地ができてくるように思います。
富永:同時に、ユーザーを満足させるユニークなマーケティング施策を実現するには、数あるアイデアを「減点法」で却下しない。これが重要だと思います。
水書:そうですね。「減点法」にならないよう、ピップの場合は早いタイミングから上層部を含め「合意形成」をしっかりしておくことが、新たなアイデアを実現させる上では重要になります。
富永:つまりアイデアを作る過程と、社内を「通す」過程とを共に上手く回すことが、インパクトのある施策を継続するためには避けられない。特に社内でアイデアを通そうとすると、つい「松・竹・梅」といった複数の案を用意しがちですよね。そうなると本命の「松」を実現したくても、会社の判断では無難な「竹」や「梅」が選ばれてしまうことがある。
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