メディア発で新しい“概念”を生み出す
——デジタル化によってメディアは大きな変化を迎えています。
佐々木:これからは、収益の面でも動画を制するものがコンテンツを制すると言ってもいいと思います。
今、映像メディアは二極化しています。テレビは数百万人、数千万人という視聴者に向けて情報発信し、一方、個人がユーチューブなどで動画配信する場合は数百人規模の視聴者というケースが多いわけです。
テレビと個人の動画配信のまん中がぽっかり空いている状態と言えます。我々はこのまん中を“ビッグニッチ”と呼び、このゾーンに向けて、数万人から数十万人の視聴者を対象に今年4月、新たに動画コンテンツを立ち上げました。
阿部:ビッグデータはビッグデータのままで見せることが極めて重要だと考えています。
「震災ビッグデータ」では、岩手・宮城・福島の被災3県と全国各地との経済取引量について、震災前と震災後を比較して示しました。こうすることで、被災地から遠方で、大震災とは無関係だと思っていた人でも、実は被災地との経済的な結びつきがあったことを実感できます。
メディアにとって大切なのは、新しい“概念”を生み出し伝えていくことだと考えています。
1年半ほど前までは「震災ビッグデータ」とネットで検索しても1件もヒットしませんでした。しかし、番組でビッグデータを活用すれば人命を救うことにもつながると提唱していくことで、今では検索すると様々な情報にアクセスできるようになりました。
これからも「震災ビッグデータ」という概念を様々な機会で広く伝えていくことが私の役目だと思っています。
竹下:メディアラボの運営は、役員と定期的にディスカッションして進めています。これは記者時代では考えられなかったことです。メディアラボという専門の部署が立ち上がったことで、社内の雰囲気も変わってきているように感じます。
今後、動画を作成したり、ビッグデータ解析を行ったりしていくとさらにコストがかかるので、メディア産業にとっては大変な時代になっていくでしょう。
メディアは教育や芸術と同じで、人がいないと成り立たない産業です。同時に、機械化できにくかったり、生産性が上がりにくかったりする産業でもあります。
これからのメディア人材に求められる能力は、企画力と取材力に加えて高度な専門性がさらに必要となってくるでしょう。