クライアントとクリエイター、最高の仕事を生む関係性とは?/アドタイ・デイズレポート(9)

「よい広告」をどう捉えていますか

——4つ目の質問です。「『よい広告』をどう捉えていますか?」。売る広告、話題になる、クリエイティビティの高さなど、色々な指標があると思いますが…

本多:クライアントの目的を叶えるのがよい広告で、そのために最適な手法を考えるのが僕たち制作者の仕事です。そのためには、手法についてもクライアントと共通の認識を作っておくことが大切です。スニッカーズの広告は一見奇抜に見えますが、「とにかく話題に残る→記憶に残る、買う」という方向性でやろうと共有したゆえの表現です。ただのインパクト狙いではないんです。

前田:同意見です。売上を上げるためには、話題にならないといけない。そのときに、どう話題になるかが大事。悪目立ちではなく、商品とクライアントを同時に好きになってもらえるようにしたいんです。

福里:どんな会社も「お客様が第一です」と言うじゃないですか。テレビCMは、基本的にテレビ番組を見ているところを、強引に割って入って、広告するわけです。

無理矢理いただいたその数秒間で、楽しませたり、感動させたり、広告させていただいた分のお返しをするのは当然のこと。つまらなくても言いたいことが言えればいい、商品が売れればいいという考えは、お客様を無視しているわけです。

だから、つまんない広告をやっている会社は、お客様を大事にしていない会社だと言っていいんじゃないかと思います。

広告を一番お客様の近くまで派遣できる「社員」だと考えれば、その人たちはなるべく面白かったり、飽きさせなかったりした方がいいに決まっています。商品を売ることと、面白いことは対立することではなくて、面白くて商品が売れればいいんだと思うんです。

パートナーシップ、長続きのコツ

——最後の質問です。「パートナーシップの長続きのコツは何ですか」。長く続くことはパートナーシップが上手く築けている証の一つだと思います。お三方ともクライアントと長く仕事を続けられていますが、いかがですか。

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螢光TOKYO 前田 康二 氏

前田:クリエイターに大御所の先生のような「憧れ系」、敷居の低い「友達系」の2つがあるとしたら、僕は完全に後者。敷居をどこまでも、地下に埋もれるくらい低くして、まずクライアントが考えていることを徹底的に聞きます。「話す」よりも「聞く」ことが大事です。

そして、残念ながら、クライアントとは出会いもあれば別れもあります。別れとはつまり、売れなくなったとき。担当者が変わったり、クリエイター変えろと言われたりするんです。だからどれだけ長い関係でも、緊張感のある関係を常に保ちます。逆に売れ続ければ、長続きすると信じてやっています。

福里:関係性というより、その商品、その企業らしい広告を作ることを意識しています。大してカッコいい企業ではないのにカッコいいCMを作って、ヒットして話題になっても、「何か違うな」と世の中の人たちに思われて、長続きしないですから。

クライアントとの対人関係に関しては、僕はもともと喧嘩がすごく苦手なタイプですし、激しい意見のやりとりなどは全然ないです。その代わり、クライアントに言われたことは、基本的に全部飲み込んでいくという、ものすごい強靭なのどを持っているわけなんですね。ごっくーん!飲み込みました!みたいな。

本多:長く続くコツは、禅問答のようですが「長く続ける」しかない。長く続けて、成功や失敗を一緒に経験するから、進化させていけると思うんです。結果を出すためには、人と同じことをやっていてはだめで、未踏の地に入っていかないといけない。

そのときに出てくるのが、リスクやコンプライアンスの問題です。そういうことを、どう制作者として一緒に切り抜けて、危険なところにある美味しい実をつかみにいくかを、パートナーとしてやっていきたいと思っています。ただし、その冒険の過程でクライアントには絶対に怪我をさせてはいけない。その責任を背負いながら、一緒に当事者としてやっていきたいです。

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