本欄では、広告主、広告業、メディア、クリエイターなどの垣根を超えて広告界の未来を本音で語りつくした2日間のセミナーの一部を紹介します。
【F4】4月16日(水) 14:10~15:10
OtoOはクーポンばらまき?流通小売りとデジタルメディアの良い関係
<パネラー>
- 株式会社ユナイテッドアローズ 上席執行役員 事業支援本部長 佐川 八洋 氏
- 株式会社東急ハンズ オムニチャネル推進部 オムニチャネルコマース課 緒方 恵 氏
<モデレーター>
- 月刊『販促会議』中澤 圭介
クーポンが購買行動のフックになっているのかを考える
——OtoO、オムニチャネルの施策において、クーポンはどういう位置づけですか
緒方:当社のお客さまの購買行動は大きく3つに分かれています。例えば、「壁に穴を開けずにフックをかけたい」というような“ソリューション”を探す場合、「送別会で先輩に面白いものを送りたい」といった“インタレスト”を探す場合、「靴が壊れたから修理したい」というような“リファイン”を探す場合です。
フェイスブックで、面白い商品を紹介したときには3000いいね!が付いたりしますが、クーポンを告知する投稿では200いいね!しかなかったりします。あくまで一例に過ぎませんがこういった側面も参考にしつつ、顧客が東急ハンズに求めていることを考えれば、当社にとってクーポンは来店のフックとしてはそこまで重要なものではないのではと思います。
佐川:ユナイテッドアローズには、対象のストアブランドで購入いただいた際にポイントが貯められるハウスカードというポイントカードがあります。こちらに新規で入会いただいた後、2回目の来店フックとして、クーポンを配布しています。それ以外は原則としてクーポンは配信していません。
クーポンは値引きに近い方法ですから、多用するとブランドのロイヤリティー自体に傷がつくことがあるので、使い方には注意する必要があります。
——O2O、オムニチャネル施策の具体的な取り組みについて教えてください。
佐川:インターネット販売に戦略的に力を入れています。自社ECサイト「UNITED ARROWS LTD. ONLINE STORE」と、ZOZOTOWNといったオンラインショッピングストアで商品を展開しています。
商業施設と同じ考え方で、サイトの客層が当社のブランドと親和性とあっていれば、さまざまなオンラインストアに出店します。オンラインストアは店舗サービスの延長と位置付けています。
従って、自社ECサイトでは品ぞろえは店舗とほぼ一致していて、送料も無料。加えて店舗の在庫が事前にチェックできるようになっています。
さらに、オンライン上で気に入った商品を店舗に取り寄せ、試着していただいてから購入を検討いただけるサービスも始めました。
また、アプリもリリースしていて、商品のタグをアプリ上のカメラで撮影すると、その商品の色サイズ別の店頭在庫を見ることができます。店舗とオンラインストアそれぞれの平均購入金額をみると、店舗のみ利用の方に比べて、オンラインストアと店舗の両方を利用される方だと年間で約3倍お買い上げいただいています。
リアル店舗を基本としながらも、店舗で買うのか、それともオンライン上で買うのか、お客さまが買いやすいよう決済手段を選択いただけるサービスとして提供した結果、オンラインでも購入されている状況です。
緒方:東急ハンズのネットストアでは、検索ベースで各店の在庫を調べることができます。最近では、オンラインで注文し、店舗で受け取る、店舗受け取りサービスを開始しました。
また、反対にオフラインからオンラインに取り入れたサービスとして、オフラインで扱っている商品が店舗で売れた場合、何の商品がどこで売れたのかリアルタイムにサイト上に表示するようにして、購買行動の後押しをしています。通常オンラインでは、目的の商品に辿りつくまでにクリック数が多いと離脱してしまいます。
ただ店舗では、反対に目的の商品に行くまでに色々な商品がおいてあることで、客単価が上がることが分かっています。当社は、そのような商品との偶然の出会い、発見をどれだけ楽しんでもらうか、ということに尽力してきた会社です。
そうした店舗での買い物を再現したいという想いから、売れた商品のリアルタイム表示機能を持たせたのです。