ハードルが高いからこそ、優秀な人材が集まる
——イノベーションを実現するためには、社員の方の意識改革が必要と思います。普段、どのように社員の方に接していらっしゃいますか。
新川:以前は外部の企業に頼んで何千万円もかけてマニュアルビデオを作り、セキュリティを絶対的に強化した時代もありました。飲食業においては、安心や安全の担保が不可欠なので、こうした取り組みも必要なところもあります。
しかし、それだけでは企業は成長していかない。そこで今は、面接のときに必ず「本当に外食が好きなの?大変だぞ。本当にやっていけるのか?」と問いかけ、その人の本質を見極めるようにしています。それでもやりたいという意思のある人に、長く勤められるようきっちりと指導するのです。
これからはノウハウやテクニックなど知識だけを共有するのではなく、センスを共有する時代です。コストパフォーマンスが良いだけでは、やがてお客様は離れていくでしょう。
井上:当社は、全員が3年の契約社員です。ベンチャー企業なのでつぶれる可能性がゼロではないからです。面接の際にはストレートに「つぶれるかもしれないが、おもしろいことをやる。一緒にやらないか?」と問います。結果、大変優秀な方が各界から集まってきて、みんなでイノベーションを起こすんだという意識で日々の業務に取り組んでます。
具体的な取り組みは3本柱で成り立っています。一つは、日本の航空会社の高コスト構造をいかに壊すか、二つ目は日本の空港会社の高コスト構造をいかに壊すか、三つ目はお客さんの高い期待値にいかに応えるか。
課題に対する対策は、ヨーロッパのLCCであるライアン航空のモデルにしてフォローしていること、LCCターミナルを作ったこと、機内誌の代わりに“機外誌”を作り、お客さんが自由に会報誌を持って入れるようにすることで従業員の負担を軽減したこと。さらに、搭乗券の表面に広告を入れることで広告収入を得るアイデアも実現しました。
これらのまったく新しい試みで、お客様にもご納得いただける格安運賃を提供し続けているのです。
——街ごとにアプローチの仕方も異なると思います。施策はありますか?
新川:当社では各店舗で独立採算性をとっています。メニューの7〜8割は私が決めるのですが、そこから運用していくのは店長とチーフの仕事です。日々現場にいる人たちがお客様との触れ合いの中で、単価を変えたりメニュー数を増やしたり減らしたり試行錯誤する方がリアリティがあると思いますね。
井上:既存の航空会社はお客様をA地点からB地点まで運んだらそれで終わりでした。ところが、当社は出発地、到着地の両方を意識したマーケティングを進めています。これを「街ベーション」と呼んでいます。
新たなお客様の需要が発生することで必ずその街にはなんらかの変化が起きているはずです。我々は、その土地のみなさまと協力して街を盛り上げていきたいと思っています。