有名な事例ですが、2009年に米国の家電量販店ベストバイが実施した「ツウェルプ・フォース」にも、インナーマーケティングの側面がありました。
これは「ツウェルプ・フォース(ツイッターとヘルプを合わせた造語)」と名付けたひとつの公式ツイッターアカウントを2千人の店頭社員みんなで共有するというものです。
そのアカウントには、ユーザーからたくさんの質問が投稿されますが、店頭社員はみんなスマートフォンを常備していて、気づいた店員がすき間時間に自発的に応えていくというものでした。
ベストバイの社員は、みんな家電が好きで働いているはずです。
顧客からの質問を外部のコールセンターにアウトソースするのではなく、家電好き社員のモチベーションをうまく生かす仕組みをつくったことがミソなのです。
当時は、「この施策の良さが分からない」、「広告と関係ないのでは」などという意見もありましたが、今振り返ると、ソーシャルメディア時代の顧客接点を広告化するアイデアとして、いかにすごいものだったかが分かります。
ツウェルプ・フォース施策はすでに終了しましたが、逆に言えば、こういった考え方が当たり前の世の中になったということなのでしょう。
「顧客接点を最適化する」と言うは易しですが、実現するのはものすごく難しいことです。
なぜなら、何が最適なのかは顧客ごとにそれぞれ違うからです。
マニュアルのような一律の対応では顧客一人ひとりに対する最適化はできないのです。
店頭や担当する社員が、自社のブランド哲学を十分に理解した上で、それぞれの状況判断に基づいた自律判断をしていく必要があるわけです。
例えば、米国のザッポスなどは、こういった社員の自律判断による顧客対応に成功している企業として有名です。
ザッポスは靴のインターネット販売業でしたが、最近ではファッション全般を取扱っています。
そもそも、人を幸せにするサービスの提供こそが本業なので、取り扱いは靴でなくても何でもいいというのです。
コマースサイトには珍しく、大きく電話番号が記載されていて、顧客をコールセンターへ誘導しています。
コールセンターといっても、ここがザッポス社員のメインの場で、この電話対応が大きな売りなのです。