【前回の記事「片岡英彦×山田まさる×中川淳一郎「戦略PRはどこへ行く?」(1)ブロガーイベント失敗の理由」はこちら】
宣伝会議のニュースサイト「アドタイ」にて3月末、このようなタイトルの記事が掲載され注目を集めました。
2009年ごろを境に広報・PR業界で定着した「戦略PR」は、これからどこへ向かうのでしょうか?3人のキーパーソンが語り尽くします。
3月27日、アドタイに掲載されたコラム記事「戦略PRは終わりました。」の筆者は、インテグレートの藤田康人さん(代表取締役CEO)。片岡英彦さんはその数時間後、Yahoo!ニュース(個人)で「『戦略PRは終わりました。』と言わないための戦略PR」というタイトルの記事をアップしていました。
左から、中川淳一郎さん(編集者/PRプランナー)、片岡英彦さん(コミュニケーション・プロデューサー)、山田まさるさん(インテグレートCOO)
他社に貢献する「空気づくり」
山田:結局、クリティカルマスに届くか届かないかはプロであれば大体予想がつくんですよね。PRしたいブランドが市場の中でトップシェアなのか、2番手や3番手なのかで戦略PRに取り組む意義が変わるわけじゃないですか。トップブランドなら戦略PRでカテゴリー全体を刺激するのも有効だけど、ただ乱暴に「戦略PRで買いたくなる“空気”をつくってほしいんだけど」みたいなオーダーをしてみても、効果は出にくいわけです。
片岡:中途半端に「戦略PR」という手法を聞きかじった人ほど「空気をつくりたい」って簡単に言ってしまうことがありますからね。でも、よくよくその企業のポジショニングなどをヒアリングしてみると、業界2位でも3位でもなく、もっと下だったりする。そうなるとカテゴリーごと訴求してもしょうがない。空気をつくったら他社の方が売れてしまうじゃないかと。そういう説得をする必要が出てくる。
山田:ブランドとカテゴリーの話ってすごく難しいですからね。僕はブランドのPRってそんなに言うほど簡単ではないと思うんです。
片岡:PRを始める前に、いわゆるマーケティングの「4P(製品・価格・売り場・プロモーション)」をもとに、コミュニケーションデザインを考えることが必要ですよね。そもそも「製品」の力だけで十分売れてしまうものもありますし。プレスリリース1本で日本中が大騒ぎになるような商品なら、それで勝負すればいい。次に「価格」を下げ「ゼロ円」にまですれば、瞬間的な話題づくりはできる。それでもだめなら「都内の1店舗だけ限定販売しますよ」といったように、「売り場」とか顧客接点をいじる。その上で最終手段としてお金を使った「プロモーション」施策がある。場合によってはタレントの力を借りてでもイベントをやるべき時もある。
山田:そういう入口の整理が非常に大事だと思います。4Pとかポジショニングとか差別化とか、マーケティングの教科書に載っているようなことがまずありきで、その上で戦略PRという選択肢があると考え始めないと、どこかで間違ってしまう。
片岡:マーケティング部門の人にとっては4Pの整理は当たり前のことじゃないですか。事前にポジショニングや競合との差別化を整理して、企画書をつくるという作業にも慣れている。でも広報部門の人ってあまりそういう経験値がない。PRを分かっている人がマーケティングなり広告なりを学んで、コミュニケーションプラン全体の立案ができるようになると一番いいと思うんですけどね。
中川:「結局さ、GoogleのAdSenceを買うのが一番KPI達成の近道なんだよね」って言うのが、最近周りで流行ってるんですよ(笑)。PRのアイデアを出したところで、「はんっ!」って、鼻で笑われる。
片岡:「そのアイデアで、どんだけ売れるんですか?」って言われますよね。じゃあAdSenseやりましょうっていう展開なら、僕らPRの専門家を呼ばなくていいじゃないかって話になる(笑)。
山田:メディアを効率的に使うっていう話になった瞬間に、たぶんPRのプロフェッショナルが活躍する場面ではなくなると思うんですよね。
片岡:「空気づくり」なるものが戦略PRの核だとしたら、一番有効な伝達媒体はテレビスポットだという場合もあるわけですからね。