日本はなぜPRの地位が低いのか
片岡:そもそも戦略PRと言う以上は、「戦略的じゃないPR」と「戦略PR」は何が違うのかと。疑問ですよね。
中川:それで言うと、日本だと総合広告代理店のプレゼンの順番が「マーケティング」「制作」「セールスプロモーション」「PR」となっているように、PRというものの地位がそもそも低いんですよ。
山田:あるいは、PRは広告の「前座」みたいに扱われてきたとかね。
中川:そうそう。そうなると、たぶんPR会社も、オレがいた博報堂のCC局(現在はPR戦略局)も電通のPR局も自分たちの地位の低さにムカついてたと思うんです。広告会社の営業にも「オマエらなんて所詮さ、スポーツ紙の編集部に水着のお姉ちゃんを連れて行ってるだけでしょ」と思われちゃう。そんなときに「オレらも戦略的にやってんだよ!戦略PRだよ!」って言えるから、「戦略PR」という言葉がPR業界の人に刺さったっていうのもありますよね。
山田:ま、僕らの地位の話はさておき(笑)、「戦略PR」なんて近年言われ始めたけど、「メディアにアタックする前行程の情報をきちんと整理して、戦略的に考えていきましょう。そのほうが効果も高まるし、もしかしたら広告よりも強いインパクトを与えるかもしれませんよ」というのが戦略PRだとすれば、10年前から取り組み始めていることなんですよね。
—最後に、宣伝会議の「戦略PR講座」を受講予定の皆さんから寄せられたお悩みに、お答えいただきます。
山田:「ネットに受けるPRネタがどんなものかは分かるのですが、自社のトーン&マナーに合わない場合、その線引きが難しいです」。こういう課題って最近よく聞かれますよね。
中川:こういう人は上司から怒られたくないだけの人なんです。「わが社のイメージが落ちたらどうするんだ!」と後で言われても私は責任が取れません、と言っているだけですから。
片岡:「会社を潰すほどのプロモーション、ブランドを傷つけるようなPRって何?」っていうことですよね。企業にとって一番深い傷を負うのは「売れない」ということでしょ。皆が一生懸命作った新商品が売れないような事態となれば、それが一番ブランドを傷つけるし、そもそも市場からブランド自体が消えてしまうこともある。
中川:すべての人がそのブランドや商品に好意的な状況になる、なんてありえないですからね。
山田:そうですね。会社が守らなきゃいけないトーン&マナーっていうのが何か、そこをもう少しはっきりさせていくべきかなと。やっぱりブランドも商品も存在を無視されるのが一番痛手なわけで、少なくともどんな変化を望んでいるのか、ポジティブに考えていくことでPRが機能していくのではないかなと思います。
片岡英彦さん(かたおか・ひでひこ)
コミュニケーション・プロデューサー 国際NGO「世界の医療団」 広報責任者
日本テレビの報道記者、宣伝プロデューサーを経て、アップルコンピュータのコミュニケーションマネージャー。MTVジャパン広報部長、日本マクドナルド マーケティングPR部長を歴任。ミクシィを経て、株式会社東京片岡英彦事務所代表取締役に。企業のマーケティング支援活動のほか、国際NGO「世界の医療団」の広報責任者を務める。
山田まさるさん(やまだ・まさる)
インテグレート COO/ コムデックス 代表取締役社長
1992年コムデックス入社。2003年藤田康人氏(現・インテグレートCEO)とB2B2C戦略の立案に着手。2007年5月、インテグレートを設立、COOに就任。2008年コムデックス代表取締役社長に就任。同年「魚鱗癬」啓発活動にてPRアワードグランプリ・日常広報部門最優秀賞受賞。
中川淳一郎さん(なかがわ・じゅんいちろう)
編集者/PRプランナー
博報堂入社後、コーポレートコミュニケーション局で企業のPR業務を手掛ける。2001年に退社し企業のPR活動、ライター、雑誌編集などをしながら、2006年からニュースサイトの編集者に。現在は編集・執筆業務の他、ネットでの情報発信に関するプランニング業務も。
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