【前回のコラム】「マーケティングテクノロジーを取り入れるということ—ツールの設計“思想”を受け入れて使っているか—」はこちら
宣伝部にも様々なアドテクノロジーが浸透しつつある。そのうちの多くはサイトのアクセス解析ツールやソーシャルモニタリングツールだろう。
マス広告の他、OOH、イベント、店頭での販促活動などリアルの場で広告コミュニケーション活動をすると、ネット上に反応が出る。筆者はこれを「スパイクが出る」という言い方をしているが、検索行動やサイト訪問、ソーシャルメディアへの書き込みなどの反応として出るこれらの「スパイク」を把握することは、マスやリアルでの広告プロモーション活動の反応をリアルタイムで可視化することでもある。
この連載では、宣伝部が全社のデータドリブンマーケティングを主導すべきと主張している。そのためには、従来にない文化も取り入れなければならない。そのひとつは、すべからく宣伝部員が真にデータドリブンな思考をするようになるということである。
それには、上記のようなデータ取得ツールを個人個人がそれぞれに都合のよいデータだけを引き出してレポートしているだけではだめだ。
マーケティングダッシュボードは、すべての関係者にデータがプッシュされていなければ意味がない。そして、他の社員もダッシュボードのデータを知っているという前提で、すべての会話がなされるようにならないといけない。
全員がデータを“浴びる”状況をつくる
マーケティングダッシュボードとは、基本、ペイドメディア(TVスポットを出稿していれば、今日の出稿量、エリア、累積出稿量など)、オウンドメディア(当該ブランドサイトの訪問数推移など)、アーンドメディア(ソーシャルメディアでのブランド名書き込みなど)のトリプルメディアにおいて、KPIを絞り込んで、リアルタイムに把握することができるものと言える。
(ダッシュボードとは飛行機のコックピットの計器類のことで操縦に必要な情報を得るものだ。つまり右に旋回するのか上昇するのかを決めるために計器類があるわけで、マーケティング活動をリアルタイムに最適化するためにあるのがマーケティングダッシュボードである。そのためには指標であるKPIは、リアルタイムに把握できる数種に限定すべきである。)
マーケティング活動に携わっている者全員が、こうしたデータを常に浴びている状態をつくりたい。例えば、「宣伝部に誰からも観ることができる大画面モニターが表示されていて、または全員のスマホにデータがプッシュされてくる、またはその両方の状態にある」ということだ。
なぜ全員にプッシュされているべきかというと、属人的にだけ行われているだけでは、新にデータドリブンなマーケティングは機能しないからであり、全社的に、あるいは宣伝部、マーケティング部は部員全員がお互いにデータドリブンな思考をしているかを追求される環境になるべきであるからだ。
マインドリセットには業務環境の改革が必要
例えば、施策のプランや実行に関する議論が社員間で行われた時、「それはダッシュボードのデータを把握した上で言っているのか」、「従来の慣習や、従来の経験値だけで言っていないか」をお互いに追求していきたい。そのためには全員がダッシュボードのデータを認識しているはずだという前提が必要である。
マインドをリセットするには、業務環境も変えていかなければいけない。データドリブンなマーケティングの実践は、経営者が考えなければいけないことだ。