タカハシ:世の中がコピーを話題にするようになったのは、ネタにしやすいからということもあるような気がしています。今年選ばれた作品も、ネタ化しているものがありました。ホンダも、リスペクト含めてですがネタになっていたし。Autowayも、JR SKISKIも。
谷山:「ぜんぶ雪のせいだ。」はある意味、天を味方に付けたともいえる (笑)。
リクルートホールディングス「すべての人生が、すばらしい。」と「のどごし〈生〉夢のドリーム」が落ちたのは、自分としては意外でしたね。
自分個人の勝手な予想では、ロト7とリクルートがグランプリを争うと思っていたので。先ほどから繰り返しになりますが「Webでもすごく話題に」なっていたし(笑)。でも、本当のこというとそれが広告のすべてではないんだけれど。
かつて僕はPR・広報的なことに懐疑的な人間だったんです。何が懐疑的かというと、自分は「広告は広告とばれているから面白い」と思っているからです。第三者的なフリをして発信すると、最高、面白い、おいしいというように、知恵を使わなくてもそのまま単純なホメ言葉を言えば済んでしまう。
でも、「私たちは広告だから、この商品に都合のいいことを言いますよ!」とばれているにもかかわらず、そこにすごい知恵があれば人々は心を動かされるし、影響を受ける。広告というのはばれているからこそ、そこにさまざまな知恵が発達してきたのではないかと思います。
タカハシ:大げさかもしれませんが、広告・コピーライターの在り方や役割というのが今年のTCC賞から少し見えた気がします。
谷山:僕らは、やはりコアアイデアを信じているんだよね。新しいメディアの使い方や新しい仕組みも大切かもしれないけど、そこにコアアイデアが存在しなければだめだと思っています。
今年のTCC賞でもその部分は変わってないとは思いつつ、メディアの使い方を駆使することで新しい知恵を生み出す世代が当然生まれてきているのも確かでしょうね。一般部門に比べて新人賞の応募数の増加が少なかったのは、そういうタイプの人がTCC新人賞を目指していないという可能性があるかもしれない。
タカハシ:カンヌなど海外広告賞には応募するけれど…。
谷山:でもTCC賞には応募しないという。そういう意味ではホンダやAutowayのような広告が受賞したことで、門戸を少し広げたのではないかという気がしています。
もちろんTCCは言葉を重視する組織ではあるけれど、どこまでを言葉と解釈するかは人それぞれですから。極端にいえば、キャッチフレーズとスローガン以外はコピーじゃないという人もいるだろうし、CMのナレーションやセリフも含めてコピーだという人もいる。
さらにいえば、色々な仕組みやキャンペーンの組み立て方とかも含めて、広い意味でのコピーと思う人もいるだろうし、デザインもキャラクターも言葉だよと言えなくもない。それに関して、僕は結局一人ひとりのコピーライターが自分の得意技を使って、コピーとはどこまでのものかと考えてやっていけばいいんじゃないかなと思いますね。
タカハシ:コピーライターが組む相手がどんどん広がっていくかもしれないですね。
谷山:まさにホンダのCDを務めた菅野薫さんのような人たちとの組み方ですよね。そういう意味では、今年は本格的にWebムービーもメインになりつつありました。
新人賞を受賞した信濃毎日新聞社の鉄拳のアニメ、TCC賞を受賞したサンポールのようなWebムービーが選ばれています。世の中はすでにそちらが主流になりつつあり、TCCもそこに追いついてきたかというだけかもしれないですが。
タカハシ:最後に、今年のコピー年鑑への期待や見どころを。
谷山:ADの中嶋貴久さんがアートディレクションを担当してくださって、のちのちにも「あ、あの年鑑」って覚えやすいようないい本ができるんじゃないかと、僕も期待しています。
今年は初めて審査委員長をやらせていただいて、いまさらながらに日本の広告はけっこう面白いなと思いました。どうしても海外の広告賞ばかりに話題が行きがちかもしれないけど、日本の広告も全然負けていないと思ったので、それを実感していただくためにも買っていただけるとうれしいかなと思います。
谷山雅計
1961年大阪生まれ。1984年東京大学教養学部卒業後、博報堂入社。制作局を経て1997年独立。フリーランスのコピーライターとなる。本年度TCC賞審査委員長を務めると同時に、年鑑制作にも編集委員として参加している。
タカハシマコト
1975年東京都生まれ。一橋大学社会学部卒業後、博報堂に入社。コピーライターtとして活動後、2014年5月“ニュースをつくるクリエイティブエージェンシー”NEWSYを設立。代表取締役CCOを務めている。6月にニュースサイト「しらべぇ」を立ち上げた。
TCC広告賞展2014 概要
開催中、7月13日(日)まで、アド・ミュージアム東京にて。
平日:11時~18時30分 (最終入館時間 18時)
土曜日・日曜日・祝日:11時~16時30分 (最終入館時間 16時)
休館日:月曜日
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