先入観を打ち破る質問をするのが自分の役割
——人材育成のことから話が変わりますが、最近の社会動向・消費者動向で気になることを教えてもらえますか。
最近、「先行き不透明な世の中」というイメージがありますが、その根本は少子高齢化による人口減少、つまり経済が成長するための土台が揺らいでいることが見えていることにあると思っています。
そうなると、大学生の就職先として大企業が人気になったりするのですが、実は、ここ10年で新規雇用を創出してきたのは新興企業であり、大企業の雇用創出は毎年少しずつ減っているというアメリカのデータがあります。こういうことを新卒セミナーで言うと、このことを知らない人が本当に多い。
さきほどの「自分で考える・調べる」ことにつながるのですが、言われたことをそのまま受け取って、例えば「本当に大企業って安全なのだろうか?」と疑問を持つ力が若者に不足していて、先入観に囚われ過ぎていることに対して危機感を持っています。従って、そういう先入観を打ち破る質問を常に投げかけるようにしています。
——最後に、業界の中で貴社が今後どのようなことに取り組んでいきたいのかを教えてください。
今まではSaaSと呼ばれる、我々の分析ツールやリスクマネジメントツールを提供する「ツールベンダー」というポジションで事業を積み重ねてきました。
しかし最近はソーシャル・ビッグデータを活用するマーケットそのものが大きくなってきたので、2011年に、サードパーティ向け、つまりある意味競合となるツールを扱う企業に対しても、データベースや分析エンジンを提供するAPI事業を正式にスタートさせました。2012年末からその需要がぐんぐん伸びている状況です。
昨年はさらに、「株式会社ホットリンクコンサルティング」も作りました。ビッグデータをマーケティングに生かしていくためには、データサイエンティストのような、データ分析から導き出したことを基にその先が提案できる人たちの知見が必要になってきます。そこで、そうしたことができるチームを集めて、コンサルティング会社を立ち上げたわけです。おかげさまで初年度から多くの引き合いをいただいています。
SaaS事業、API事業、そしてコンサルティング事業の3本を柱に、中心事業であるSaaSはもちろんですが、勢いのあるAPI、コンサルの事業をさらに成長させていきたいですね。
<取材を終えて>
戦略、マーケティングを学ぶ育成環境を整えながら、同時に誰もが仕事において自らの意思・判断で動けるように上司が支える。この「逆ピラミッド」組織という考え方が強固だからこそ、スタッフ一人ひとりに会社のフロントに立つという自覚と強いリーダーシップを求めているのだと感じた。
また、成瀬氏が「本当にフラットな組織」と話す通り、インタビュー中も同席していた方がはっきりと意見を述べている姿も印象的。ここ数年で新たな領域へ事業を拡大している同社のアイデアは、こうした組織構造・取り組みから生まれているのではないだろうか。
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成瀬功一郎
ホットリンク 取締役COO
1992年 米国カリフォルニア州ロスアンゼルス市立ピアスカレッジ卒業。97年オプト入社。営業部門、メディア部門、マーケティング部門、モバイル部門の責任者を歴任。2006年ホットリンク 非常勤取締役就任。07年同社 取締役COO就任。13年、ホットリンクコンサルティングの代表取締役を兼任。