月は誰のもの?

突然ですが。月は誰のものでしょうか?今まで月面に到達したことがある国はアメリカ、ロシア、中国の3カ国のみです。この中で、有人着陸したことがあるのはアメリカだけです。1961年〜72年の「アポロ計画」ですね。実際に月面にはアメリカ国旗が立っています。(大気が無い月面で国旗がたなびいて見えるのはおかしいから、本当はアポロは月に行ってないんじゃないか?という人もいますが、アポロが月面においてきた反射板が地上から確認できるのでアポロはちゃんと月面に着陸しています。)それ以降、なんと40年以上も人類は月に降り立っていません。

では、月は国旗をおったてたアメリカのもの、なんでしょうか?

1967年に国連が発効した「宇宙条約」では、月は人類すべての財産であるとして月の領有権の主張を禁止しています。その後1984年に発効された「月協定」は探査報告の義務化や資源の所有禁止をうたっていますが、それには宇宙開発後進国ともいえる国のわずか13カ国が批准しているにすぎません。(アメリカ、ロシア、中国、日本、インドなど宇宙開発に積極的な国は開発が制限されるという理由から批准していません)。言い換えると、月の資産利用に関してはまだルールが明確化しておらず、1967年の「宇宙条約」のときのまま止まっているようなものなのです。

つまり、月は誰のものでもない。

にもかかわらず僕らはなぜか、月は国家やNASAやJAXAみたいな国の特別な研究者たちだけが扱っていいものだと思って敬遠、とまでは言わないけれど、なんか別世界のものだと思いこんできた気がします。

月は使っていいのです。

僕らふつうの人間も。

マーケティング活動の場として。

今回、僕らはコンビニでも売っている一般商材であるポカリスエットを月面に運びます。これは、月が国家や研究者などの特別な人だけのものではなく、一般の僕たち誰もが月に行ける時代が幕を開けることを意味します。それをみんなに「事実」として知らしめること。じつは、このプロジェクトの裏にはそんな大きな意義と覚悟があるのです。

では、ポカリスエットがなぜ月なのか?

少し、今回のプロジェクト「LUNAR DREAM CAPSULE PROJECT」について説明したいと思います。

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このプロジェクトは、大塚製薬のポカリスエットのブランディングのための仕事です。若々しいブランド像を作り上げ、競合ブランドから若年層を奪取することがマーケティングの課題です。普通であれば、マーケティング予算を制作費とメディア費に当て、ブランドイメージを若者にふったTVCMを制作し大量投下する、いわゆる「広く告げる」作業をするでしょう。

でも、そうはしたくなかった。

なぜか?

結論から言うと、ポカリスエットの持つブランドストーリーははるかにCMの域を超えている、というかCMで「伝える」だけではミッションは達成できないな、と正直思ったからです。

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細川 直哉(Drill チーフ・クリエーティブ・オフィサー)
細川 直哉(Drill チーフ・クリエーティブ・オフィサー)

1970年生まれ。早稲田大学大学院にて建築意匠を専攻。1995年、電通入社。

クリエーティブ局、OOH局、プロモーション事業局を兼務し、「消費者参加型」キャンペーンを数多く手がける。
2011年にドリルのエグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクターに就任。与えられた時間と予算の中で最も劇的にクライアントニーズを解決するというミッションを実行するために組織された少数精鋭のソリューション集団を率いている。

CLIO、ADFEST、Spikes Asiaでのグランプリをはじめ、Cannes Lion、ニューヨークADC GOLDなど数多くの国内外の広告賞を受賞。Cannes Lionほか数多くの海外広告賞の審査員を務める。

一級建築士でもあり、自ら建築デザイン、空間プロデュースも手がける。

細川 直哉(Drill チーフ・クリエーティブ・オフィサー)

1970年生まれ。早稲田大学大学院にて建築意匠を専攻。1995年、電通入社。

クリエーティブ局、OOH局、プロモーション事業局を兼務し、「消費者参加型」キャンペーンを数多く手がける。
2011年にドリルのエグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクターに就任。与えられた時間と予算の中で最も劇的にクライアントニーズを解決するというミッションを実行するために組織された少数精鋭のソリューション集団を率いている。

CLIO、ADFEST、Spikes Asiaでのグランプリをはじめ、Cannes Lion、ニューヨークADC GOLDなど数多くの国内外の広告賞を受賞。Cannes Lionほか数多くの海外広告賞の審査員を務める。

一級建築士でもあり、自ら建築デザイン、空間プロデュースも手がける。

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