インターネットデバイスの拡大が変える世界
スマートフォンの普及のスピードの速さに象徴されるような、インターネットに接続できる様々なデバイスの日進月歩は、マーケティング業界にとっては興味深いと同時に頭の痛い変化です。
いわゆる「ケータイ」の時代と違って、端末ごとのチャネル最適化とは異なり、現在のタブレットを含むスマートデバイスに対するマーケティングは、デスクトップPCやアプリなどインターネットに接続した場合のすべてのデジタルチャネルを統合した視点が求められています。オムニチャネルの回で説明したとおり、このような要求は顧客の側からのニーズなので、放っておくといつの間にか競争に遅れているという状況がくる可能性もあります。
かといって「現在の」デバイスだけを対象にしていては、ウェアラブルやスマートTVのようなデバイスの変化のスピードについていけないかもしれません。
マーケターとしては、デジタルチャネルにおけるシームレスかつ持続的な成長をデバイスの拡大とともに描くとともに、非連続的な変化には臨機応変に手が打てるようにする、といったアクロバティックな姿勢が必要なのです。
SoLoMoで「コンテクスト」を明確に
SoLoMoとはSocial(ソーシャルメディア) Location(位置情報) Mobile(モバイル端末)のそれぞれの頭の2文字をとった言葉ですが、最近めっきり聞くことはなくなりました。
おそらくソーシャルメディアにしろ、モバイルにしろ、変化が当たり前の時代になってしまったので、このことだけを特別マーケティングのポイントとして語る必要がなくなったためでしょう。だからこそですが、このSoLoMoという概念の意義をしっかり考えておくと今後の変化に対して準備できるように思います。
まず理解すべきなのは、SoLoMoは単に「モバイルでのソーシャルメディア利用、チェックイン位置情報を活用せよ」という意味ではないということです。SoLoMoの本質は、Mo=モバイルというのが、インターネットスマートデバイスによって、利用者の個々の特性や嗜好を代表する「情報」になるということです。
これは即座にプライバシーの問題を喚起させますが、マーケターが求めるのは個人を特定する情報ではなく、あくまでマーケティングに必要な「属性」や「ニーズ」が中心です。インターネットアクセスのオーディエンスデータも同じような意義ですが、モバイルがより有意義なのは、Locationのような状況データにより、利用者のコンテクストが追加される点です。
SoLoMoのソーシャルは拡散よりも「影響」
利用者のコンテクストが明確になると、ただ単純に20代のファッションが好きなOLというオーディエンスデータでも、土曜日の午後2時ごろ銀座の4丁目付近でドーバーストリートマーケットの情報をブラウザしている、というコンテクストが加わるだけで、彼女にもし広告メッセージを出すとしたらどんなものであるべきかすぐ想像がつくでしょう。
もし仮に彼女がFacebookでこれから自分が欲しいブランドの商品を投稿したり、口コミをTwitterで検索したりした場合、ブランドにとって有意義なのは、彼女のソーシャルグラフにとってその情報がどう影響を持つかということでしょう。
ソーシャルメディアは「メディア」だからといってリーチや拡散がテーマなのではなく、個人という信頼性によってその情報がどのくらい人に影響するかのほうが重要になってくるのです。このようにSoLoMoを利用者の特性を代表する情報と捉えるということは、個々のコンテクストとネットワークによるマーケティング機会を最大化するということです。
これは顧客をベースにしたCRMよりも、より現在の生きた情報を活用し、個々のカスタマージャーニーに沿った「モメンタム(瞬間の動向を捉えた)」あるいは「ダイナミック(状況によって対応変化させる)」なマーケティングアプローチというべきものです。このようなマーケティングを成功させるにはより高度なアドテクノロジーや情報分析が必要になりますが、そのことについては次回以降で解説していきます。
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