カンヌとは、いい距離を保ちながら、目の前の仕事に臨んでいきたい。――電通 岸勇希さん

――今年のカンヌに参加をし、今どんな感想を持っていますか。

カンヌ現地にて開催期間中に取材。

カンヌ現地にて開催期間中に取材。

今年のカンヌは審査員でもなく、普通に見る側として参加しました。電通では菅野のホンダチームがチタニウムでのグランプリを受賞することができ、本当に嬉しかったです。電通にとっても悲願、そして長年サイバーをやってきた僕らにとっても憧れだったので、悔しさもありますが、それを通り越して素直に嬉しいですね。

一方、日本全体で言うと、苦戦した年だったと思います。ゴールドの獲得数は多くても、獲得した件数は少ない。僕は昨年のカンヌが終わった際に、「これから日本が苦戦する年が始まるのではないか」と発言していたのですが案の定、厳しい状況になってきたなと感じていますし、この状況を「何とかしなければ」と思っています。

電通は「Sound of Honda / Ayrton Senna 1989」でチタニウム部門グランプリを受賞した。

電通は「Sound of Honda / Ayrton Senna 1989」でチタニウム部門グランプリを受賞した。

カンヌ全体を見て感じたことは、カンヌの名称から「アドバタイジング」が外れて以降、アメリカン・エキスプレスの「Small Business Saturday」やナイキの「Nike+ FUELBAND」など、広告に留まらない新しいビジネス開発を評価する動きがありましたが、今年の受賞作は比較的、広告らしい作品が多かったということ。様々な要素があるので一概には言えませんし、見る人によってその評価は違うと思いますが、僕はそのように感じました。

また相変わらず、カテゴリをまたいで複数受賞する作品も増えていて、カテゴリの意味がさらになくなりつつあるという感想を抱きました。

「Dentsu Lab Tokyo」

カンヌ会期中には電通主催のセミナーの場でテクノロジーをベースにした新しい取り組みである「Dentsu Lab Tokyo」についても発表があった。岸氏もメンバーの一人。

――来年のカンヌに向けての意気込みをお聞かせください。
カンヌで賞を獲ることを目指して仕事をすると、「その結果、どうしたの?」という仕事に終わってしまいがちだと思います。

僕は、いつもどれだけ多くの人に知らしめたかではなく、人の行動にまで影響を与える、変えていけるような仕事がしたいと考えているのですが、こうした姿勢で一つひとつの仕事に向き合いながら、その延長で世界の人たちから知られ、評価されるような仕事ができればと思います。

カンヌとはいい距離を保ちながら、目の前にある仕事に臨んでいきたいと思っています。

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