カンヌは、その背景にある空気を論じた方がいい――PARTY 清水幹太さん

今年「Mobile Lions」の審査員を務めた、清水幹太さんに審査後、カンヌ現地でお話を伺いました。

――カンヌという場をどんなふうに見ていますか。
カンヌとは簡単に言ってしまえば、“広告同業者組合”の“全世界伝え方選手権”だと思うんです。だからカンヌで選ばれるのは、この“同業者組合”の中で「これからは、こういう伝え方をするとよさそうだ!」とみんなが納得して、腑に落ちる作品だな、と。

一方でこういう場に参加をしていると時折、消費者というか広告やコンテンツを見る人たちがどこに介在しているんだろう?と思う時もあります。でも、あるって言えば、あるんです。

例えば、昨年のカンヌから「ソーシャルグッド」というトレンドが生まれました。でも、別に「ソーシャルグッド」が一般消費者の間で流行っていたわけではありません。

大切なのは、「なんで、ソーシャルグッドというトレンドが生まれてきたのか?」という背景にあるものを考えることです。それを考えなければ、僕らの仕事においては、なんの腹の足しにもなりません。

賞の結果だけを追っていると、その根底にあったユーザーの動きから離れてしまいますから。なのでカンヌは、その背景にある空気を論じたほうが良いのではないかと思っています。

――今年は「Mobile Lions」の審査員を務められました。

審査を通じて改めて思ったのは「Mobile Lions」とは、“毛細血管Lions”だな、ということです。

どういうことかと言えば、モバイルは人の生活のあらゆる隙間に入っていけるもの。人にはそれぞれ、その人だけの限られたシーンがありますが、モバイルであればそういう限られたシーンにも入っていけるということです。

「あまりに細かすぎて、よくわからない物マネ」っていうのがありますけど、モバイルはそれくらい細かいところまで入って行けるものだな、と。

その点で、より多くの人に届けようとする、これまでの広告とはその点が違いますよね。

例えば「Mobile Lions」でゴールドを受賞した、QOL「Alvio」の喘息の子どもが吸引器を使うトレーニングをゲーム感覚でできるアプリ。

これまでの広告であれば、マスに向けて喘息の子どものために寄付を募ろうという発想は出てきても、なかなか喘息の子どもとその親にだけ訴えかけるコミュニケーションは生まれてこなかったと思います。それが実現できるようになったのは、モバイルがあるからこそ。細かすぎるところまでいける。いかなる人にもアプローチできる。そこがモバイルの面白いところですよね。

次ページに続く

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