カンヌは、その背景にある空気を論じた方がいい――PARTY 清水幹太さん

――カンヌでは国境を越えて伝わるような、人の根源的なインサイトに訴求する作品が受賞していると思います。モバイルの「細かすぎるところまでいく」という特性と国境を超えて伝わるような普遍的な表現は、どう両立するのでしょうか。

両立していると思います。QOL「Alvio」も対象とするターゲットは、細かいですが、その根本はとても大きいインサイトに基づいている。それは、子供は誰もがゲームが好きというインサイトです。発想としては“風邪薬シロップ”みたいなものだと思います。

ですから、対象はとても細かいのだけれど、でもそこで“誰にでも響く”コミュニケーションをしているのではないでしょうか。

「Grand Prix」を受賞した、NIVEAの「PROTECTION AD」も同じです。子供を公園や浜辺で、自由に遊ばせる人は全世界で見てもニッチな人たちだと思うし、そんなシーンが起こりうる機会も限られている。でも、シーンはニッチであっても、「子供が遠くに行ったら心配だ」という心理は、全世界共通で誰にでも理解しうるものです。

――今、ニューヨークを拠点に仕事をされています。カンヌは世界で仕事をしていく上でどのように役立つものですか。

カンヌは目標にはなるけれど、世界で仕事をしていく上では、それだけあれば通用するわけでもないかな、と。

「カンヌでゴールドを10個、獲りました!」といった話は、確かに業界内でのポジショニングには使えるし、それはそれで便利なところもあるのだけれど、ニューヨークを拠点に仕事をするようになって思うのは、それだけではだめかなとも思っています。

ただ今回、審査を通じて思ったのは、みんな“広告大好きっ子”だということです。

普段、僕が川村とかと「ああでもない」「こうでもない」とか話していることを強制的に合宿してやっている感じでした。確かに日本人にとっては言語の壁はありますが、コミュニケーションをつくる上で見ている場所、感じていることは、言語の壁を超えた共通言語になりうるものだなと思っています。

ちなみに今回、審査に参加をして、みんなが話す速度がゆっくりで助かりました。それに比べて、いつもいるニューヨークは、みんな話すスピードが速い!これまで、“大リーガー養成ギブス”をつけていたような、鉄ゲタをはいてトレーニングをしていたような気持になりました(笑)。

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