惜しい!バカに見えるリピート——《だぶりチェック》で中身を濃く

【前回の記事「惜しい!二兎を追うメッセージ——《対象別に分けて》伝えよう」はこちら】

ある小さくて生マジメなIT企業が、自社製品を宣伝しているWebサイト上のバナー広告[写真左]。私が改良文案を提示して、つい最近、実際に差し替えられたのが[写真右]です。元のテイストを崩さない控えめな修正に留めていますが——クリックしてみたくなるのは、どちらでしょうか。

なぜ、左の広告は字数のわりに、情報量が少ないのか。最大の元凶は、無駄なリピートです。「契約書作成」という言葉が、たった5行の中に4回並んでいます。見る人は、「4回も!」という事実には直接気づかなくても、そこから醸し出される“モタモタ感”によって、「この会社、頭悪そう…」という印象を抱きかねません。

現にコンテストで特別賞まで取っているチームなのだから、本当は頭いいはずなのに、この表現でとても損をしてますよね。算数は大得意だけど国語はちょっと、という人に、ありがちな損のパターンかも。もっと本来のスマートさを打ち出さなくちゃ! …でも、どうやって?

①すぐ出来るのは、“だぶりチェック”の習慣化です。“ダブルチェック”(チェック済みのポイントを、念のためもう一度見ること)ではなく、“だぶりチェック”。要は、広告でも社内プレゼンでも学内レポートでも、何か作文したら、「同じ単語をクドクド繰り返してないかな?」という意識に集中して読み返し、重複をスッキリ整理することです。この作業は、慣れれば素人だってできます。

②この重複削除ができると、そこに新たな空き地が生まれます。[写真左]の例など、4重のだぶりを片付けるのですから、かなりの字数が浮きます。その空き地に入れる新情報を、考えましょう。このケースの場合、つい先週(6月24日)「コンテスト受賞」という出来事があったので、加えるべきは当然そのニュース。元の広告の、商品名とキーワード(「Office用」「アプリ」「簡単に」という3語)は温存しながら、この新情報をはめ込みましょう。

③最後に、“だぶりチェック”のダブルチェック。おっと、もう1つ「らくらく」という語もだぶってますね。これももったいないから別の言葉に置き換えて、はい、[写真右]のでき上がり! もう誰も、「頭悪そう」なんて思いません。

——もちろん、プロの広告の世界では、わざと狙ってリピートを使いこなす事例もあります。でも、ここは《初心者必読》コラム。まずは地道に、だぶりチェックから始めましょう。同じ事を何度も言う人って、やっぱりちょっと、うっとうしいと思われちゃいますから。

【下村のクライアントの皆様へ】
今回は初めて、実際に企業広告を改善したケースをご紹介しました。…が、「下村に相談すると、こうやって改善前をネタにされちゃうのか!」というご心配には及びません。これは、特例です。

実は今回とり上げた広告は、私がかつて在籍していた会社のものです。同社製品が受賞、というニュースを知って久々にHPを訪ねて、このバナーを発見。古巣のよしみで、頼まれてもいないのに即“ダメ出し”した、というのが顛末です。

そういう遠慮のない間柄だから、この掲載についても社長(中学時代からの親友)の特別許可を得られた次第です。ご案じなく!

<おしいコンテンツ、募集中!>
あなたが街で見かけた、ビミョーに伝わらないおしい看板。自分で作ってみたけれど、今一つ手応えがないおしい掲示。そんな実例の写真を、簡単な状況説明を添えて「kouhou@sendenkaigi.co.jp」までお送りください。採用されたコンテンツに対し、下村氏が当欄でアドバイスいたします。
下村 健一(慶応義塾大学特別招聘教授)
下村 健一(慶応義塾大学特別招聘教授)

1960年東京都生まれ、東大法学部卒。TBS報道アナからフリーに転じ、「サタデーずばッと!」、「NEWS23」などに出演。2年間の内閣広報室審議官(民間登用)を経て、現在、関西大・白鴎大などでも教鞭を執る。主著『首相官邸で働いてみて初めてわかったこと』(朝日新書)。

HP:http://shimomuraken1.com/
twitter:ken1shimomura

下村 健一(慶応義塾大学特別招聘教授)

1960年東京都生まれ、東大法学部卒。TBS報道アナからフリーに転じ、「サタデーずばッと!」、「NEWS23」などに出演。2年間の内閣広報室審議官(民間登用)を経て、現在、関西大・白鴎大などでも教鞭を執る。主著『首相官邸で働いてみて初めてわかったこと』(朝日新書)。

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