講演者
片山 義丈(ダイキン工業 総務部 広告宣伝グループ長)
「CMSは魔法の杖ではない」
1兆7800億円の売上のうち、海外事業の比率が約7割を占めるダイキン工業(2013年度実績)。2006年にマレーシアのOYLインダストリーズ社を、2012年には米国のGoodman社を買収するなど、近年は新興国や北米事業の拡大に取り組んできた。現在、空調事業としてはグローバルでトップシェアを誇る同社は2014年3月末、リニューアルしたグローバルサイトを公開した。
プロジェクトが始動したのは2012年末のこと。社内のヒアリングや海外拠点の調査を経て、戦略の立案に4カ月、サイト構築に約1年を費やした。再構築の目的について、片山氏は次のように説明する。「2012年に世界ナンバーワンの空調メーカーとなったものの、グローバル市場でプレゼンスをアピールする場として自社サイトを十分に活用できていませんでした。特に新興国では今後、冷房などの空調機器のニーズは高まり成長産業となる。各国の営業を支援し、代理店との接点としても機能するようなサイトが必要でした」。
今回のリニューアルは総務部広告宣伝グループがプロジェクト全体の推進役を担い、コンテンツ制作は広報機能を持つコーポレートコミュニケーション室のほか、グローバル戦略本部、化学事業部やサービス本部なども連携。12部門を横断したプロジェクトメンバー26人が関わった。そのすべてが兼任のメンバーとなっている。
グローバルサイトをどのように位置づけるかは企業により異なり、日本語サイトを多言語化するのみという企業も多い。ところが同社の場合は、各国が独自に運用するローカルサイトを下支えするハブの役割を担わせている。いわばグローバルサイトが「目次」となり、必要な製品情報や代理店向けの情報は各地域の子会社や販社のサイトに振り分けているのだ。その理由について片山氏は「既にローカルサイトが充実している地域が多かったのと、扱う製品の規格やサービス、あるいは事業の成熟度も国・地域によりまったく異なるという点も大きい。そこでグローバルサイトには企業ブランドを高めるコンテンツやIR情報を集約しました」と説明した。
またサイトリニューアル実行にあたり、片山氏は自ら他社の成功事例に学ぼうと、同じようにグローバルサイトを管轄する立場の人から直接ヒアリングを行ったという。そこで最も重要だと気付いたポイントは「自社に適した外部の専門家を見つけて取り組むこと」ということだった。
「制作会社、あるいはその中のスタッフも評判の良い人、優秀な人と取引ができるかが重要。今はCMS(コンテンツマネジメントシステム)の導入ありきの提案も多いが、グローバルサイトだからといってCMSを使うことが最適解とは限らないし『魔法の杖』でもない。サイトの目的ありきで、手段を選ぶべき」と締めくくった。2014年度は、アジアなど自国への情報発信が不十分なエリアのローカルサイトの再構築に力を注ぐ。
「CMS」関連記事はこちら