社員が自発的に育つ場をいくつ提供できるか
——人材採用はどのようにしていますか。
経験者採用を基本としています。ただ、博報堂に新卒入社した社員を毎年数人ずつ受け入れています。また当社のインターンシップから一部入社に至る人もいます。
広告会社で働いていた人材の方が即戦力となりやすいのは確かですが、あえて他の業界で経験を積んだ人材も採用するように心掛けています。基本はチームで仕事をしますので、さまざまなバックグラウンドを持っている人が集まった方が、チームが活性化しやすいからです。メーカーのプロダクトプランナーや音楽レーベルのマネージャー、住宅会社の営業、外資系ホテルの広報マネージャーなどを前職としていた人がいます。今は広告業界以外から来られた方が15%ほどに上ります。
——育成方針についてお聞かせください。
研修制度は、博報堂とTBWAのものがあります。博報堂には豊富な研修プログラムがあり、企業内大学である「HAKUHODO Univ.」ですべて受けることができます。TBWAには「ディスラプション」「メディアアーツ」といったプログラムがあり、実務で必ず使っています。このほか、TBWA\CHIAT\DAYには毎年クリエイターを送りこんでいますし、TBWA\HAKUHODOの海外オフィスが中国の広州と北京にあり、ケーススタディーの共有や人材交流を行っています。
もっとも、ただ研修を受けさせれば良いのではなく、自らつかみ取ろうとしないと身につきません。「育てる」というよりは、「育っていく場を提供する」ことが大切です。会社としては、そうした場をいくつ提供できるかがポイントだと考えています。社員がそれぞれどんなスキルを高めたいのか、上長と一緒に検討するようにしています。
——これからのビジネスの方向性は。
広告会社ならではの新たなビジネスのあり方を模索し始めています。「いつまでも広告代理店と呼ばれていたいのか?」という話に戻りますが、既存のスタンスの延長線上を突き進むことが本当に正しいのか。広告ビジネスは今後どうなるのか、ということから問いかけています。広告業界そのものをディスラプションするくらいの心意気がないと、イノベーティブな会社とは言えませんから。