自らの「見えない足かせ」を外す――制約というハンデを利用する方法—Someone’s Shoes(前編)

前回の記事「隣の人の“アイデアの発火”をトレースする方法 – Spark Shadowing(後編)」

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「よいアイデア」が出ない理由

新規商品企画やキャンペーンの案を出すときに、ブレスト会議を開いてみたはよいが、アイデアがまったく出ない…という経験はないだろうか。

熱が足りなかっただけで、時間をかければ結果的にいろいろ生み出せる、ということなら良いが、たいてい理由は別にある。アイディアを発想するための場、「アイディエーションセッション」に最も肝要なものは、優秀なメンバーでもポストイットでもない。それは「適切な制約」である。

そもそも制約とはなにか。一言でいっても、マクロなもの(体制や言語など)からミクロなもの(対象や人物、場面など)まで様々だ。

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「制約」の持つ力 – 具体性のさじ加減

一番簡単な制約の例は、「問い」である。よい「問い」が設定できれば、よいアイデア発想につながる。問いを設定する上で大事なのは「具体性」だ。ターゲットとなる人物、シーンや場所、状況等をなるべく具体的に設定し、問いに落とし込む。慣れていないと、「問いをあるシーンに特化しすぎてしまうと、枠が狭くなりすぎて発想しづらいのでは」というコメントを受けることがある。「問い」が制約として厳しすぎるのでは? という疑問だ。これには一理ある。さじ加減は重要だ。しかしある程度は枠組みを狭めないと、生み出されるアイデアが、質においても量においても、中途半端になってしまう。

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渡邉 康太郎(takram design engineering )
渡邉 康太郎(takram design engineering )

アテネ、香港、東京で育つ。大学在学中の起業、ブリュッセルへの国費留学等を経て、2007年よりtakram参加。最新デジタル機器のUI設計から、国内外の美術館でのインタラクティブ・インスタレーション展示、企業のブランディングやクリエイティブ・ディレクションまで幅広く手がける。代表作に、東芝・ミラノサローネ展示「OVERTURE」、NTTドコモ「iコンシェル」のUIデザイン、虎屋と製作した未来の和菓子「ひとひ」など。

多くのプロジェクトを元に体系化した「ものづくりとものがたりの両立」という独自の理論をテーマに、企業のデザイナー・エンジニア・プランナーらを対象とする人事研修、レクチャーシリーズやワークショップを多数実施。国内外の大学やビジネススクールでの講義・講演も。香港デザインセンターIDK客員講師。独red dot award 2009等受賞多数。趣味は茶道。

AXIS、IDEO Tokyoとともに、デザイン思考を広める一般向けの連続イベント「Collective Dialogue - 社会の課題にデザインの力を」を共同主宰。著書に「ストーリー・ウィーヴィング」(ダイヤモンド社)。その他「THIS IS SERVICE DESIGN THINKING. Basics – Tools – Cases 領域横断的アプローチによるビジネスモデルの設計」(BNN新社)の監修・解説を担当。

渡邉 康太郎(takram design engineering )

アテネ、香港、東京で育つ。大学在学中の起業、ブリュッセルへの国費留学等を経て、2007年よりtakram参加。最新デジタル機器のUI設計から、国内外の美術館でのインタラクティブ・インスタレーション展示、企業のブランディングやクリエイティブ・ディレクションまで幅広く手がける。代表作に、東芝・ミラノサローネ展示「OVERTURE」、NTTドコモ「iコンシェル」のUIデザイン、虎屋と製作した未来の和菓子「ひとひ」など。

多くのプロジェクトを元に体系化した「ものづくりとものがたりの両立」という独自の理論をテーマに、企業のデザイナー・エンジニア・プランナーらを対象とする人事研修、レクチャーシリーズやワークショップを多数実施。国内外の大学やビジネススクールでの講義・講演も。香港デザインセンターIDK客員講師。独red dot award 2009等受賞多数。趣味は茶道。

AXIS、IDEO Tokyoとともに、デザイン思考を広める一般向けの連続イベント「Collective Dialogue - 社会の課題にデザインの力を」を共同主宰。著書に「ストーリー・ウィーヴィング」(ダイヤモンド社)。その他「THIS IS SERVICE DESIGN THINKING. Basics – Tools – Cases 領域横断的アプローチによるビジネスモデルの設計」(BNN新社)の監修・解説を担当。

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