制約は「足かせ」にも「触媒」にもなる — Spark Shadowingの例
がちがちな制約では幅が狭くなりすぎてしまい「足かせ」になるが、適切なスケール感で枠組みを設定できるならば、その制約はむしろ飛躍的にクリエイティビティを高める「触媒」として機能する! 換言するなら、制約条件は、足かせにも触媒にも、いずれにもなり得る。コインの両面のようなものだ。
制約の定め方にはいろいろなものがある。例えばアイデア発想において「もしあの人ならばどのように考えるだろうか?」という思考のシャドウィングを行うならば、それは発想をある型に嵌める制約に見えながら、実は大変有効な触媒として機能する。これは前回までにSpark Shadowingというタイトルで紹介した。
Spark Shadowing が有効なのは、自分自身の思考様式を一度保留し、普段と違う回路を介して発想の幅を広げることができるからだ。これはある種、偏向性の礼讃でもある。これを「個人」で行うのではなく、「企業」や「組織」、「チーム」で行うのが ”Someone’s Shoes” だ。
今回はこの “Someone’s Shoes” というテクニックを紹介したい。
Someone’s Shoes — 他の組織のメンバーになりきる
Someone’s Shoes は非常にシンプルだ。たとえば自社またはクライアントが「総合家電メーカ」だったとしよう。自社を主語にするのではなく、敢えて他社を主語にしてアイデアを出してみるのだ。
- ライバル企業(例:Panasonic, SONY, TOSHIBA…)
- 自社と似た、別ジャンルの企業(例:任天堂、MUJI、楽天、…)
- ジャンルに関わらず、とにかくいまをときめく企業(例:Apple, Facebook, Google, LINE, ユーグレナ…)
- その他ブレスト参加者が好きな企業(例:Dyson、KOMATSU、マガジンハウス、PARTY…)
他の組織の人物になりきることを切っ掛けに得られる果実は二つある。一つ目は、純粋に「新たなアイデアを得る」ことだ。 (次回に続く)
注釈:Someone’s Shoesという名前について
最後までお読みいただいてありがとうございます。少しだけ、語句についての解説を。
- put oneself in “someone’s shoes”
英語で put oneself in someone’s shoes と言うと、誰かの身になって、立場になって考える、という意味になります(以前、『イン・ハー・シューズ』というタイトルの映画がありましたね)。
- 思考の作法 “SS series”
前回のSpark Shadowingが「個人の思考をなぞる」作法であるならば、今回のSomeone’s Shoesは「集団の思考をなぞる」という作法になります。どちらも本質的には同じで、自らが無意識的に纏ってしまっている制約を客体化する、という目的意識のもと生まれています。そしてどちらも、頭文字が ”SS” となっています。
これは思考(S)の作法(S)シリーズであり、且つ「自己を補完する」ための(Self Supplementary)ツール群です。両方とも私の呼ぶ所の ”SS Series” のバリエーションです。