――テクノロジーを人と融合させることで、古くからあるスポーツにイノベーションが起こせるかもしれない?
真鍋:テクノロジーが追い付いてきたという感があります。サッカーの試合中にボールをトラッキングする取り組みは、僕自身が開発で関わったものでも10年くらい前からありますが、最近、急に現実的に使われ始めましたよね。
太田:バスケットボール、アメフト、野球などアメリカ発祥のスポーツはデータやテクノロジー活用に積極的だと思います。
一方で、フェンシングやテニスなどヨーロッパ発祥のスポーツは文化から始まった経緯があるので、「なんでもかんでもデータで白黒はっきりつけましょう」という風土はなじまないところもあるかもしれませんね。紳士淑女のスポーツであり、審判のミスも含めて、その競技であるという意識と言うか…。
サッカーもヨーロッパ発祥で文化的な素地から生まれたものでしたが、最近はアメリカの資本が多く入ってきているので、変わってきたのではないかと思います。
紳士淑女のスポーツであり、審判のミスも含めて、その競技であるという意識と言うか…。サッカーもヨーロッパ発祥で文化的な素地から生まれたものでしたが、最近はアメリカの資本が多く入ってきているので、変わってきたのではないかと思います。
真鍋:それ、面白いですね。スポーツはテクノロジーとどう付き合うべきか。すべてをトラッキングしてデータ化して、可視化することは技術的にはできるけれど、人に任せておいたほうがよいところもある。まあ、僕はなんでもトラッキングして、データ化してしまいたいですけど。
太田:日本で言うと、京都的な文化に近いのでしょうか。ヨーロッパには、あからさまにしすぎないことをよしとする文化がありますよね。審判に対しても「場の空気を読め」という観客のプレッシャーがありますから。
真鍋:逆に場の空気を読んで、可視化する技術を開発してみたり。
暦本:確かに、空気とは何かを解析すると面白いですね!サッカーの試合で、ホームとアウェイの時の観客席の空気の違いを分析するとか…。
21世紀は身体回帰のゲームが注目
――スポーツのイノベーションというテーマだけでも、可能性が広がりますね。
真鍋:フェンシングだけを見ても、やってみたいことがたくさんあります。一つのスポーツでこれだけテーマが見つかるのだから、他のスポーツにも目を向けるともっと楽しいことが見つかりそうです。
暦本:20世紀はコンピューターゲームが流行しましたが、21世紀は逆に身体に回帰したゲームが注目されるのではないかと思っています。テクノロジーを活用した21世紀の新しいスポーツが生まれたら面白いな、と思います。
今回、セミナー内で紹介したドローン内蔵のボール「Hover Ball」(空中静止や反重力など、遠隔操作が可能なボール)も、そういった可能性を模索しようとつくったものです。
太田:僕はスポーツオタクで、いろんなスポーツを観戦していますが、自分の競技が一番わかりづらい(笑)。マイナースポーツの中には、わかりづらいという課題を抱えているものも多いですが、フェンシングをわかりやすく見せることができれば、他のスポーツにも応用していけると思います。
僕は国際フェンシング連盟の選手委員長をしているので、世界中の人たちも巻きこみながら、フェンシングを通じてマイナースポーツが抱える課題を解決するロールモデルを創りたいと思っています。そうすれば、オリンピック自体の価値そのものも変わっていくはずです。
佐々木:フェンシングというスポーツが抱える課題もあれば、企業そして社会にも、様々な課題があります。僕らエージェンシーのクリエイターは、これまでは表現を考えることが仕事でしたが、このクリエイティビティを拡大・拡張させて様々な課題解決に生かしていければと考えています。
電通だけでクリエイターは約1000人います。広告表現をつくる職人としての役割だけでなく、この力でいろんな課題を解決していけたらいいなと思っています。
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