自社メディア活用に購買データ活用、まだまだ取り組むべきことはある
——社会動向で気になることがあれば、教えてください。
やはり、少子化による人口減少の問題です。私が参加している、内閣府の「選択する未来」委員会では、50年後ことを考えているのですが、今のままだと50年後には人口が1億2000万人から8000万人になると試算されています。このまま行くと労働人口も大幅に減り、企業活動も成り立たなくなってしまいます。
労働人口を増やすには、女性が働きやすい環境にして労働市場に投入する、移民を入れる、という手段がありますが、それでもまだ人口が足りません。
ではあと何をすべきなのかと考えると、生産性の向上です。デジタルマーティングも絶対にその一つの手段だと思っています。また、オフィスの生産性を上げるような取り組みは、日本はほとんど行ってこなかったため、大いに可能性がある。したがって、我々もその分野で役立ちたいと思っています。
——最後に、今後注力していくことがれば、教えてください。
当社の事業は多岐にわたるので、どれかと言われると難しいですね。インターネット分野は新しい言葉が次々出てきますが、その前に自社メディアや購買データなどもまだまだ整理・活用されていないと感じています。この2~3年で優先順位をつけて、まずはそれらに関するビジネスを大きくしたいですね。
もう一つ、DMPにも注力していきます。とはいえ、いきなり壮大な構想をかかげるのではなく、仕組みはフレキシブルにして、扱うデータもまずは各企業のコアになるデータか扱いやすいデータから始める。小さなデータを積み重ねていって、ビッグデータにしていくことから始めたいと考えています。
<取材を終えて>
育成として行っていることのみならず、どうすれば「個の成長」につながるのか、ということを徹底して考えて取り込んでいると感じた。それが「出戻りも副業もOK」「手がけたプロジェクトは名前入りで紹介する」といったことに表れているように思う。
一見、デメリットが大きいように見えるが、長い目で見れば、スキルの高い人が増えることは、自社のみならず、ネットソリューションを活用してより効率化を図りたい企業にとってもメリットになる。業界全体を発展させようという意思を感じる取り組みだ。
石黒不二代
ネットイヤーグループ 代表取締役社長 兼 CEO
ブラザー工業、スワロフスキージャパンを経て、米スタンフォード大学ビジネススクールに留学しMBA取得。その後、シリコンバレーでコンサルティング会社を起業し、1999年にネットイヤーグループ創業に参画。2000年5月より現職。2008年に東証マザーズ上場。内閣府の「選択する未来」委員会や経済産業省 データ駆動型イノベーション創出戦略協議会などの公職も務めている。