月を使う?それって…

ポジティブ、ネガティブ両方の意見が出ることは当初から想定していました。(むしろバッシングなど強烈なネガティブな意見はほぼ皆無でした)

大事なのは、ネガティブな意見が出ることに対する「心構え」ですね。

マイナスな意見が来た時のFAQを用意しておく、ということももちろん重要ですが、それ以前の「プロジェクト関係者の心構え」です。

こういう「前例がない」「失敗するかもしれない」「チャレンジングな」企画を実施するぞー!となった場合、チーム内(クライアントさん含めて)で出る最初の反応は、

 「ネガティブな反応が出て、ブランドに傷がついたらどうするの?」

というものだと思います。そのリスクを考えたら、こんな企画はクライアントは買えませんよ、という反応。

もちろん僕らドリルは、あらゆる裏取りと実現の角度を責任もって高める努力をしてからでなければ、このようなチャレンジングな企画は提案しない。のですが、(そこまで徹底せずに絵に描いた餅だけで、さもできそうな顔してプレゼンしちゃう「いきおいクリエーター」が多すぎます涙、)それでもたまに上記のような反応がプレゼンの場でも返ってきます。

今回もプロジェクトを発表した結果、先に書いたようなネガティブな反応がいくつか世の中に出てしまった訳です。

でも、僕は思うのです。

むしろ、ブランドに対するポジティブな意見とネガティブな意見、両方出てきてしかるべきで、それについて大いにディスカッションが行われるべき。世の中でのそれら意見のぶつかりあいこそが、よりブランド像を明確にきわだたせていくことになると思うのです。

今回の場合は、昨日まで誰も月の利用のことなど想像もしなければ話題にもしなかったわけで、そこにインパクトのあるでっかい石を投げ込んだことにより、世の中がそれについて意識するきっかけになった。このプロジェクトを始めたポカリスエットは何を目指しているんだろう?どんなこと考えてるんだろう?とブランドについて考え始める土台を築いた訳です。

 「失敗したっていいじゃないですか。この無茶な冒険にチャレンジするというだけで、それはもうものすごいブランディングですから」

これは、今回このLUNAR DREAM CAPSULE PROJECTをプレゼンした時の大塚製薬さんの一言です。この言葉でプロジェクトチームは一丸となりました。

僕はこの言葉を聞いたとき、ああ、きっとプロジェクトは成功するな、と強く確信しました。

ブランドが、月や宇宙やいまだかつて誰も挑戦したことのない領域にチャレンジする際の「メリットと課題」があるとするならば、クライアントさんとプロジェクトチーム全員の「心構え」が固く一致団結していれば、メリットは課題を軽く凌駕するに違いない、ということではないでしょうか。

「失敗すら成功に変えてみせる」という心構えがチーム全員にあるかどうか、その機運を作り出せるディレクターなりプロデューサーなりクライアント担当者なり「意思決定者」がチームをまとめているか、そのあたりが大事な気がします。

最後に、このプロジェクトに対する海外の記事の一文を引用して今日のコラムを締めたいと思います。

The Objective Standard
The proper, rational response to such an announcement is to praise those pursuing these great values, and to long for the day when lunar colonists are so successful that the moon is spotted with landfills.

このプロジェクトの発表に対する、正しく、そして適切な反応は、このような偉大なる考え方を貫こうとしていることを誉め称え、月面がゴミでいっぱいになるほどに月コロニー(月への移民)が成功する日が来るのを待ち望むことだ。
 

Drill 細川直哉

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細川 直哉(Drill チーフ・クリエーティブ・オフィサー)
細川 直哉(Drill チーフ・クリエーティブ・オフィサー)

1970年生まれ。早稲田大学大学院にて建築意匠を専攻。1995年、電通入社。

クリエーティブ局、OOH局、プロモーション事業局を兼務し、「消費者参加型」キャンペーンを数多く手がける。
2011年にドリルのエグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクターに就任。与えられた時間と予算の中で最も劇的にクライアントニーズを解決するというミッションを実行するために組織された少数精鋭のソリューション集団を率いている。

CLIO、ADFEST、Spikes Asiaでのグランプリをはじめ、Cannes Lion、ニューヨークADC GOLDなど数多くの国内外の広告賞を受賞。Cannes Lionほか数多くの海外広告賞の審査員を務める。

一級建築士でもあり、自ら建築デザイン、空間プロデュースも手がける。

細川 直哉(Drill チーフ・クリエーティブ・オフィサー)

1970年生まれ。早稲田大学大学院にて建築意匠を専攻。1995年、電通入社。

クリエーティブ局、OOH局、プロモーション事業局を兼務し、「消費者参加型」キャンペーンを数多く手がける。
2011年にドリルのエグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクターに就任。与えられた時間と予算の中で最も劇的にクライアントニーズを解決するというミッションを実行するために組織された少数精鋭のソリューション集団を率いている。

CLIO、ADFEST、Spikes Asiaでのグランプリをはじめ、Cannes Lion、ニューヨークADC GOLDなど数多くの国内外の広告賞を受賞。Cannes Lionほか数多くの海外広告賞の審査員を務める。

一級建築士でもあり、自ら建築デザイン、空間プロデュースも手がける。

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