——育成ということから少し外れますが、最近の消費者の動向や社会の動きについて、気になっていることはありますか?
赤松:最近の業界には、2000年前後の「iモード」や「着うた」などが出始めた頃と同じような空気を感じています。あの当時はそもそもインターネットだということを知らないでコンテンツを買っていた人もたくさんいました。その時と同様に、現在も仕組みはよくわからないけれど、便利・楽しいから使ってしまう、というような状況があるのではと感じています。
最近は「オムニチャネル」という言葉がビジネスの注目ワードになっていますが、これも10年前に同じことをやろうとしてもうまくいかなかったはずです。それは、技術的な面だけではなくて、どれだけ生活者がデジタルに慣れ親しんでいるかという面が大きいと思います。
今の20代はまさにデジタルネイティブ世代ですから、スマートフォンを使ってあれこれ行うことに対して抵抗感がありません。その層が購買力を持ち始めるようになったことなども、オムニチャネルが注目されている理由だと思います。
——技術動向と消費者のマインドパワーのシフトが相まってオムニチャネルの流行につながったのですね。最後に、今後どのようなことに力を入れていきたいと考えているのでしょうか?
赤松:オムニチャネルの持つ二つの課題の解消を目指したソリューションを提供していきたいと考えています。オムニチャネルはお客様を集め、特定して、コミュニケーションして、アクションをしてもらい、データを蓄積することが大切ですが、そのシステムやプロセス全体を構築することが非常に高いハードルになっています。
その中でも最も難易度の高い「リアル店舗でお客様を特定する」という課題について注目しています。この課題には、iBeaconを使ったお客様の管理システムやシェアリングシステムを開発して取り組んでいます。
もう一つ、オムニチャネルはWEBサイトでも、メールでも、ソーシャルでも、電話でも同じコミュニケーションをしないといけません。しかし、多くの企業様ではそれぞれ担当部署が分かれているので、コミュニケーションを統一することが困難です。
この体制面の課題については、チャネルの統合をお手伝いするコンサルティングやカスタマセンターの提供というかたちで対応しています。デジタルというよりも人事のような仕事のウェイトが大きい仕事ですが、最初に申しあげた通り、やはり「デジタルの業務におけるアナログ的な力の需要」を感じています。
<取材を終えて>
デジタル時代と言われるからこそ、アナログの部分を大切に、という考え方が「どの部門のスタッフでも、必ず顧客と接する経験をさせ、経営者に育て上げる」といった社員育成の取り組みにも活かされていた。同社が今後注力する「オムニチャネル」領域は、店舗などリアルの部分が大きくかかわるだけに、そうした取り組みが大いに役立つと感じた。
赤松 隆
ANALOG TWELVE 代表取締役
大手モバイルコンテンツプロバイダーの創立期からコンテンツ事業部長として携帯コンテンツ事業を牽引後、2008年にANALOGTWELVE創業。「どのビジネスも入口と出口はアナログ」がモットー。
内山 英俊
ANALOG TWELVE 取締役
米国でベンチャー設立後、外資系コンサルティング会社にてICT業界の戦略立案を実施。100以上のモバイル/WEBサービス構築を経験し、オムニチャネル・カスタマーサービスの第一人者として業界を牽引。